[優]


日付が変わって少し経った頃、ピンポーンと何度も鳴る音が。
この鳴らし方は1人しかいない。
ドアを開けてあげると、フラフラしながら玄関に入ってきた。


『優ー!』

「おかえり。」

『ただいまだよー!』

「楽しかった?」

『うん!みんな全然変わってなくてさ…』

「麻衣?」


靴を脱いでいる途中、突然黙ってしまった麻衣。
心配になって覗き込むと、目をつぶって寝ていた。
こんなに飲むなんて相当楽しかったんだろうけど、さすがに飲みすぎだ。


「ねえ!起きて!こんなとこで寝ないの!」

『優…』

「ん?」

『好きだよ。』

「…知ってる。ほら!立って!」

『やーだー!』

「じゃあここで寝る?」

『やーだー!おんぶしてー!』


放っておくとほんとにここで寝ちゃうだろうし、仕方なくおんぶしてそのまま寝室へ運ぶ。
そのまま大人しく寝てくれるかと思いきや、服を脱ぎ始める麻衣。


「着替える?」

『暑い!』

「今クーラーつけたから。ちゃんと服着て。風邪ひくよ?」

『暑いもん!』


何度パジャマを渡しても着てくれない麻衣は下着姿のままベッドに寝転んだ。
そしてすぐに可愛い寝顔を見せてくれる。
クーラーどうしよっかな…
いつも通りタイマーかければいっか…
いや、風邪ひいちゃうかな…
まあいっか。自業自得だ。
そう思いながら私も麻衣の横に寝転び、目を閉じた。

朝起きると、私に抱きつくように寝ている麻衣。
寒かったんじゃん。
服を着せてあげようと思って起き上がると、麻衣も目をさました。


「あ、おはよ。」

『さむ…』

「だから服着なよって言ったのに。」

『え?なんで服着てないの…もしかして…』


そう言って体を隠しながら私を睨む麻衣。
誤解が凄いな。
迷惑かけられたのはこっちなのに。


「何もしてないから!」

『ほんとに?じゃあなんで私、服着てないの?』

「暑いって自分で脱いだんじゃん。」

『それで、襲われたんだ…』

「だから!何もしてないってば!」

『優、寒いからあっためて。』

「服着なよ。あっ、クーラー消すかあ。」

『ねえ、ぎゅってしてよー!』


そんな麻衣を無視してタオルケットをかけてあげてパジャマを手に持ち、ベッドに戻ると少し拗ね気味の麻衣。


「はい、これ着て。」

『着ない。』

「寒いんでしょ?」

『優があっためてってば。』

「しょーがないなあ。おいで。」

『ふふっ こっちがいい。』


座っていた麻衣に後ろから抱きついていた私を引き離したかと思うと、向かい合って座り直した麻衣。
少し冷たい麻衣の肌が触れた瞬間、なんだか愛おしくなってきてこれでもかと抱きしめる。


「まだ寒い?」

『苦しい…』

「ちょっと運動しよっか?」

『しない。』

「しよ?」


しないっていいつつも、ゆっくり押し倒す私に全く抵抗してこないってことは承諾したって事でいいよね。
でも何もせずに服を着させようとすると、腑抜けた顔をしている麻衣。


「どうした?」

『別に。』

「服着ないと。またクーラーつけたでしょ?」

『暑くなるかなと思って。』

「ん?」

『バカ…』


そう聞こえた直後に重なった唇。
離れようとするも、首の後ろに回っている麻衣の腕のせいで離れられない。
ニヤッと笑う麻衣。
私も負けずともうそんな気がないふりをする。


「お腹空いた。」

『しないの?』

「しない。」

『ねえ。』


グッと腕に力が入り、麻衣に引き寄せられるけど抵抗して顔を背ける。
すると突然麻衣の腕の力が緩む。
突然の事でバランスを崩した瞬間、気づいたら麻衣が上に乗っていた。


『ご飯食べる?それとも…』


肩のヒモをずらしてこっちを見つめてくる麻衣。
もう限界だ。
もう一度麻衣と上下逆転して、麻衣の上に乗ると勝ち誇ったような表情をしている。
悔しいけど、私の負けだ。
大好きな人をあっためてあげなくちゃ。








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