[理佐]


鈴木優とかかれた画面を開き電話のマークを押すか押さないか悩み始めて早1時間。
出てくれるかな…
迷惑じゃないかな…
用もないのになんだよって思われないかな…
いろいろ考えちゃってなかなかかけれない。
悩んでてもしょうがないか。
勇気を出してボタンを押し、耳に携帯を当てる。
プルルルルと呼び出し音が鳴ってしばらくしてその音が途切れた。


『もしもーし。』

「あっ、もしもし?」

『もしもし?どうした?』

「えっと…今何してるのかなーって…」

『今?公園にいる。』

「こんな夜に?何してるの?」

『ランニングしてて、休憩中。』

「ごめん、休憩中に。」


全然いいよーといつもと同じようにのんびりした声で返ってきた返事。
特に話したい事があったわけじゃないから、会話が続かない。


『理佐は今何してたの?』

「何もしてない。」

『暇だからかけてきたのー?』

「うーん…まあ、そうかな?」

『全然喋ってないけど、暇つぶしの相手になれてるー?』

「うん。」

『そっか。なら良かった。』


休憩中って事はまたランニングするから電話切らなきゃなと、思ってたけどしばらくしてもそんな様子を見せない優。


「休憩長くない?」

『もう歩きながら帰ってる。』

「えっ、そうなの?ごめん。」

『ううん、まだ理佐と話したいから切りたくなくて。』


その言葉を聞いてドキドキと早く動き始める心臓。
思わず無言になる。
今、私の顔は絶対赤い…


『今、家だよね?』

「うん。」

『窓の外見てー。』


その言葉を聞いて急いでベッドから降りてカーテンを開けると、外で手を振っている優がいた。


「なんで…こっち遠回りじゃん。」

『んー。なんとなく遠回りの気分だったから。』

「外暑い?」

『普通。じゃ、理佐の姿見れたし帰るねー。』

「えっ、もう?」


そう言うと本当に歩き始めてしまった優。
追いかけようと思ったけど、追いかける勇気は私にはない。
追いかければ少しは優との距離縮めれたかもしれないのに…
そんな後悔に襲われながらベッドに横になると、優が突然息を切らし始めた。


「もしもし?どうしたの?」

『はぁ…はぁ…』

「優?」

『はぁ…雨…』

「雨?」


もう一度窓の外を見ると雨が降っていた。
結構大雨だ。
しばらくすると乱れた息は聞こえなくなって、家に着いたのだと思い少し安心する。


『めっちゃ濡れたー!』

「風邪ひかないようにね?」

『理佐のせいだ。』

「遠回りしたのは優じゃん。」

『会いたくさせたのは理佐じゃん。』

「…」

『ちょっと!なんか言ってよ!恥ずかしいじゃん!』


笑ってるから冗談で言ってるのはわかってるんだけど、好きた人にそんな事を言われて嬉しくないわけがない。
緩む口元を手で押さえる。


『じゃあお風呂入るから切るね?』

「うん。急にかけてごめんね。」

『今度はランニング中じゃない時にしてね?』

「いつしてるかなんてわかんないもん。」

『じゃあ、明日は私からかける。』

「明日?」

『うん。用事あった?』

「ううん!ない!」

『ふふっ よかった。じゃあまた明日ね。』


おやすみと交わし切れた電話。
学校が夏休みに入っちゃって毎日会えないから、また明日ねという言葉がすごく新鮮に感じる。
そして何より冗談でも会いたいと思ってくれた事も嬉しい。
夏祭りにでも誘ってみようかなと積極的になれそうな夏の予感。








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