[優]
今日は大好きな大好きな彼女の誕生日。
20歳の誕生日のお祝いはちょっとだけ背伸びをしてお洒落なレストランを予約して、初めてお酒を一緒に飲んだ。
今年は遊園地に行く予定だったけど、あいにくの天気で中止して私の家でゆっくりする事に。
「なんでこのタイミングに台風きちゃうかな…」
『優のせいじゃない?私、晴れ女。』
「私もだしー。」
『でも、ゆっくりするのも悪くないじゃん。』
「いつでもイチャイチャできちゃうもんね!」
『常にこれくらい離れててねー?』
そう言って笑いながらソファの端っこに座り直した理佐と私の間に、クッションが置かれた。
「あっ!ケーキ作ろー。」
『手伝う?』
「1人で作る!」
『そっか。』
「美味しいの作るからね!」
『やっぱ一緒に作る。』
手際よく下ごしらえをしていく理佐の横で、私は言われた事を言われた通りにこなしていく。
ほぼ理佐が作ったようなもんだ。
手が空いた私はまだフルーツを盛り付けている理佐に後ろから抱きつく。
『これ乗せすぎかなー?』
「んー、いいんじゃない?」
『余った。あーん。』
「ん。美味しい。」
『このいちご甘い。』
「桃も美味しかったよ。」
冷蔵庫にケーキを入れようとする理佐に抱きついたままでいると、邪魔って怒られて一回離れて先にソファへ。
後から来た理佐は最初に座っていた時とは違いいつもと同じようにピタッと横に座った。
「理佐ー。」
『んー?』
「目つぶって。」
素直に目を閉じた理佐の唇を奪うとそんなに力を預けてないのに、後ろに倒れた理佐はクスクスと笑っている。
「お誕生日おめでと。」
『ふふっ ありがと。』
「誕生日プレゼントとってくるね。」
『待って。』
理佐のペースにもっていかれないように離れようと思った瞬間首に手が回り、さらに腰に回った足はクロスしていて完全にロックされる。
「離してくれないとプレゼント取りに行けないんだけど。いらない?」
『んー。いる。』
「じゃあ離して。」
『はーい。』
「待っててねー?」
そう言って寝室に置いておいたプレゼントを取りに行くと、後ろでガチャっとドアが閉まる音がして振り向くとベッドに座る理佐がいた。
「え?待っててって言ったじゃん。」
『まだ見てないから大丈夫。』
「じゃあまず1こ目ね。」
『Tシャツだー。』
「お揃いだよ。はい、次2こ目。」
『遊園地のチケット?』
「今日行けなかったからね。晴れの日に行こ?」
やったーと喜んでいる理佐。
そして3つ目を手に握る。
これは渡すか渡さないか結構悩んだ物。
「これが最後。手出して。」
『ん。』
「右手でいいの?」
『え?』
理佐の左手を取って薬指に指輪をはめると、くしゃっと子犬みたいな顔をしてこっちを見てきた。
そんな理佐に私の左手を見せると一度指から取られた理佐とお揃いの指輪。
『私がはめる。』
「ふふっ ありがとう。」
『失くさないでよ?』
「わかってるよー。だからほら。」
すぐに物を失くしてしまう癖がある私を心配している理佐に向けてチェーンを差し出す。
これがあればある程度の撮影や収録は衣装の下でつけたままで大丈夫なはず。
『ほんとにありがとう。』
「指輪は悩んだんだけどね…」
『指輪が1番嬉しいかも。』
「ほんと?」
『優に言い寄ってるモデルさんとか知ってるんだか…』
理佐の言葉を遮るように唇を塞ぐ。
そしてそのまま押し倒すと、人差し指を天井に向ける理佐。
部屋の明かりを暗くしてもう一度理佐にキスをする。
「改めてお誕生日おめでとう。」
『ありがとう。』
「理佐しか好きじゃないよ。これからもずっと。」
『ずっと一緒にお祝いしてね?』
「もちろん。」
そう言うとくしゃっと目を細めて笑った理佐。
この笑顔が側で見ていられるならなんだってする。
2人の薬指に光る指輪にそう誓った。