[麻衣]


ずっと好きだった先輩に猛アタックを続けてやっと付き合う事ができた。
学校でも1.2を争うほどモテる先輩だっただけに、先輩達とのいざこざはもちろんあって苦労したのは言うまでもない。
授業が終わり、連絡をしようとした時たまたま見つけた優に走って駆け寄る。


「ねえ、今日泊まりに行っていい?」

『今日はご飯行く約束がある。』

「また?いつも誰と行ってるの?」

『えっと…』

「誰?」

『七瀬。』


七瀬は優の元カノで私と同じゼミ。
元カノとご飯行ってるなんて…
嘘をつけばいいのに元カノの名前を出してくる所が、信憑性高くて嫌なんだよなあ。


『麻衣?どうした?』

「七瀬のとこ行かないでよ…」

『えっ、ちょっ、泣いてるの?』

「泣いてっ…ないっ…」

『あーもう…』


泣かないでと涙を拭いてくれる優。
意外だった。
なぜなら優はめんどくさい人が苦手。
すぐ泣く子は無理と周りにぼやいていたのを知っている。


『七瀬とのご飯断るよ。』

「ごめっ…ん…いいよ…行ってきてっ…」

『泣くほど嫌なんでしょ?』

「いやっ…ていうかっ…不安…」

『あー、付き合ってたから?』

「うん…」


優は携帯を取り出し、誰かに連絡を取った様子。
ポケットに携帯をしまうとニコッと笑って、帰ろっかと呟いた。


「ご飯いいの?」

『彼女が泣いてるのに行けるわけないじゃん。言ってくれてありがとう。ごめんね。』

「こっちこそごめん…」

『麻衣が謝る事じゃないでしょ。ほら、帰るよー?』


先に歩き出していた優の横に並び手を握ると、何も言わずに指を絡めた繋ぎ方に変えてくれた。
しばらく歩いていると繋がっていた手がギュっと強くなった気がして、優を見たけどずっと真っ直ぐ前を向いてたから、気のせいかなと思っているとだんだん口元が緩んでくる優。


「何笑ってんの。」

『めっちゃ見られてるなあと思って。』

「優が…」

『私が?何?』

「…なんでもない。」


夜ご飯どうしようねと優は本当に何も気にしてない様子。
やっぱ気のせいか。
するとまたギュッと手が握られる。
やっぱり。
気のせいじゃない。


『ふふっ』

「また笑ってるー。」

『明日何する?』

「んー、ゆっくりしたいなあ。」

『あっ!掃除手伝ってよ!』

「ねえ、私の言った事聞いてた?ゆっくりしたいんだけど。」

『明日新しいベッド届くんだよね。』


あのベッド捨てるんだ。
適当に買ったやつだからそろそろ買い換えたいって言ってたし、枕元に明らかにプリクラを剥がした跡とかあったもんなあ。
昔付き合った子とのやつだったらしい。
七瀬が嫉妬して剥がしたやつもあるって言ってたっけ。
そんないろいろ過去があるベッドで寝る事にいい思いをしていなかったのは確かだから、買い換える事にどこか嬉しい気持ちもある。
次の日朝早くから新しく届くベッドの為に掃除を始める。


「これは?捨てる?」

『捨ててー!』

「ねえ、どれくらいの大きさのやつくるの?」

『ダブルベッド!』

「えっ、何でそんな大きいの頼んだの?」

『今狭くない?目覚ますとよく麻衣のこと潰してるんだよね。だから苦しいかなって。』

「優が寝相悪すぎるんだよ。」


綺麗なったベッドを引き取ってもらいスペースの空いた寝室に、今度は新しいベッドが置かれ早速ダイブする優。


『きたー!新品ー!ほら!麻衣も!』

「大きくない?」

『確かに。寝る時はくっついて寝ようね。』

「喧嘩したら離れて寝るだろうから、寝る時に仲直りできないね?」

『そしたら寝相が悪いフリして近づくよ。』

「ねえ。」

『ん?』

「好きだよ。」


そう言った私を見てまた笑っている優。
この余裕のある笑い方むかつく。
私だけすごい好きみたいで。
まあ事実だから仕方ないんだけど。
こうして今日も好きという言葉で、優が離れて行かないように繋ぎとめているんだ。


『あのさ、麻衣が思ってる以上に麻衣の事好きだと思うよ?だからそんな自信なさげに言わないでよ。』

「だって優、友達と遊んでばっかりじゃん。特に最近は。」

『嫌なら言ってよ。今日みたいに。』

「優にも友達付き合いあるし、嫌われたくないもん。」

『リビング戻ろっか。』


そう言って先に寝室から出て行った優。
少し遅れてリビングに戻ると机で何かしている様子の優の手元を覗き込むと、名刺ぐらいの紙に何やら書いていた。
そして少しするとこっちを向いて一言。


『あげる。』

「何これ。」

『だいぶ早いけど誕生日プレゼント。』

「旅行券?」

『そう。そこに書いてある日絶対空けといてよ。』


最近優が会っていたのはななみんだったり沙友理だったり、私の友達だったらしい。
旅行でどっか行きたいとこないのって、しつこく聞かれてたのはこれだったんだ…
手書きの旅行券を受け取った日から1ヶ月間、ソワソワする日々となった。








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