[優]
静かな廊下をそっと歩く。
階段を登り屋上への扉をゆっくり開く。
うん、今日もいい天気。
ここは私の唯一落ち着ける場所だ。
『サボりは良くないと思いまーす!』
「この声は愛佳だな…」
周りを見渡しても誰もいないけど、きっとあそこにいる。
出入りする扉のすぐ横にあるはしごを登るとその上でゴロンと横になってる愛佳の姿。
「みーつけたっ!」
『サボっていいの?』
「愛佳に会いたくてきたの。」
『バーカ。』
「愛佳も会いたかったでしょー?」
『別にー。』
相変わらずツンデレだなあ。
愛佳の横に足を伸ばして座ると、よいしょっていいながら頭を乗せてきてすぐに目をつぶる愛佳の頭を撫でる。
『ねえ。』
「ん?」
『最近ねると仲よすぎない?』
「そう?」
『くっつきすぎなんだよなあ…』
そう呟きながら眩しそうに目を開ける愛佳の顔を覗き込む。
これはあれだよね?
恋人同士だからこそのあの感情。
いつも教室ではクールなすまし顔してんのにこんな事思ってたとはね。
「やきもち妬いてんの?ねるに。」
『そんなんじゃないし。』
「そっかそっかー。でもね愛佳、私も理佐にめっちゃ嫉妬してるからね?」
『知ってる。だって優は私の事大好きだもんね?』
「悔しいけど、そうなんだよねえ。大好き。愛佳は?私の事好き?」
『たぶん?』
「ねーえ!ちゃんと言ってよー!好き?」
『好き好き。』
うっわ。
めちゃ適当に答えてきた。
しかもまた目つぶってるし…
この感じ… 寝ようとしてるな。
「愛佳、目開けて?」
『ん?ちょっ…』
ギリギリまで顔を近づけておいて、目を開けた瞬間に愛佳の唇に噛み付く。
痛いんだけどって唇を触りながら険しい顔をしてる愛佳を見て笑ってると、下から長い手が伸びてきて頬をパチンと思いっきり挟まれた。
「え、いった!」
『こっちのセリフなんだけど!』
「愛佳が素直にならないからじゃん。」
『ちゃんと好きって言ったじゃん!』
「言い方がダメ。適当だったもん。」
『好きだよ。』
「もう遅い。」
そう言うと、スッと起き上がって膝に乗ってきて向かい合う座ってきて、顔を手で挟まれジッと見つめられる。
『大好きだよ?』
「…。」
『ねえ、目逸らさないで。』
「こんなのずるい。」
そう言って愛佳に抱きつくとちゃんと優しくギュッと抱きしめ返してくれる。
ふふっと笑ってる声が聞こえる。
きっと私の大好きな笑顔で笑ってるんだろうなあ。
またこうして愛佳の事をどんどん好きになっていくんだ。