[理佐]



教室に入ると今日も1番最初に両手を広げ駆け寄ってくるあるクラスメイト。


『理佐!おはよ!』

「おはよ。」

『今日も可愛い!天使!はい、ぎゅー!』

「朝からうるさい。」



両手を広げているのを横目に綺麗にスルーして自分の席につく。


守屋『おはー』

「あかねん、おはよ。」

茜『今日も王子には塩対応なんだね。』

「ちゃんと挨拶返してるじゃん。」

茜『これだからツンデレは…』


鈴木優はみんなの人気者で、見た目よし、性格よし、スポーツ万能。
女子校であるこの学校ではボーイッシュな容姿から王子と呼ばれ親しまれている。
勉強が少しできないのがたまに傷だが、それも含めて鈴木優という人なんだろう。
2年生になって同じクラスなり、仲良くなっていつでも素直に気持ちをぶつけてくる優に素直になれなくて、朝みたいな態度を取ってしまう。
授業が終わりみんなで帰ろうと準備していると茜が寄ってきた。


茜『理佐今日日直だよ。』

「そうだった…」

織田『じゃあ先にカラオケ行ってるねー?』

「待っててくれないの?」

愛佳『早く歌いたいからごめんねー!』



そう言ってみんな出てってしまった。
誰もいなくなった教室でとりあえず日誌を書いてると、ガタっと前の椅子が動く。


『まだー?』

「先行ったんじゃないの?」

『トイレ行ってたら置いてかれてた。今日は、久しぶりの実験でした。グループに別れて…』

「ちょっと恥ずかしいから読まないでよ。」



今日の感想のところを読み始める優を止めて、もうすぐ書き終わるから黒板消しといてと頼むと快諾してくれた優。
書き終わって優の方を見ると黒板前に優の姿はなくて、マフラーをして手袋をして帰る準備をしていると黒板を消してた時に手が汚れたみたいで、手を拭きながら教室に戻ってきた。
そして近づいてきてマフラーの隙間から私の首に手を当てる。


「冷たっ!」

『理佐のせいじゃん。』

「帰るよ?」




外にでるともう夕暮れ。
寒いねーって手をスリスリしながら歩いてる優に問いかける。



「手袋ないの?」

『ない。』

「そりゃ寒いよ。」

『大丈夫袖の中に入れるから!』


そう言って袖の中に手を引っ込めるけどまだ寒そうで…
立ち止まり片方の手袋を取って優の片手にはめてあげるとありがとうってニコニコ笑ってる。
寒くなった方の手で優の手ギュッと握りコートの中に入れてあげるとびっくりしてる優。
そうだよね。
普段なら絶対こんな事しないもんね。



『理佐?どうしたの?』

「別に。」

『ふふっ 理佐の手あったかい。』



カラオケに近づくとパッと手を離す優。
まっすぐ前を見る優の視線の先にはコンビニに買い出しに来てた愛佳の姿。


愛佳『おっ!やっと付き合ったかー!』

『ん?』

愛佳『ん?』

「愛佳のバカ。」

愛佳『え?ごめん。まだだった?』

『まだもなにも、理佐とは何も… 』

愛佳『りっちゃん早く素直になりなよ?』



そう言って先に店に入っていった愛佳。
続いて店に入っていこうとする優の腕を掴み引き止める。


「待って。さっき愛佳の言ってた事…」

『あー、大丈夫大丈夫!いつもの愛佳の冗談でしょ?もっと早く気づいてれば早く離したんだけどね…』

「違う。冗談じゃなくて…。その… いつも冷たくあしらってごめん。」

『え?待って。何で謝るの?』

「いつも恥ずかしくて素直になれなくて…」

『別にそれも理佐じゃん?どんな理佐も好きだからいいよ?』

「ありがと…」



そして中に入ろうとする優をもう一度引き止める。
さすがに不思議そうな顔をする優。



『どうした?』

「えっと…」

『帰る?』

「ううん。」

『何か買いに行く?』

「ううん。」

『じゃあ入るよ?』



わかってる。
伝えるなら今がチャンスだってこと。
やばい、緊張してきた。
下を向いてゆっくり深呼吸をする。
顔を上げて優の目を見つめると優しい顔で私が話し始めるのを待ってくれてる。


「優の事好き…」

『ほんとに?』

「かも。」

『えー!今好きって言ったじゃーん!』

「うるさい。もう中入ろ。」

『待って待って!理佐、ずっと大好きだよ。』

「じゃないと困る。」



こうして無事に付き合った私達。
優が私の事を好きなのはあんだけオープンにしているし、クラス中のみんな知っていたけど私が好きなのはここにいる愛佳、だに、茜、もんちゃん、ふーちゃんしか知らなかった。
今日の帰りも優が置いてかれたのは嘘だったみたいで、理佐と行くからってわざわざ戻って来てくれたらしい。
優はよく好きって伝えてくれてくれるけど、たぶん私の方が好きな自信がある。
絶対言わないけどね。










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