[理佐]


お店までは車で15分程度の距離。
早く着かないかなと窓の外を眺める。


ねる『そんなソワソワされても、困るんやけど。』

「梨加ちゃんと喋ったよね絶対…」

ねる『話すだろうねー。りっちゃんそんな嫉妬妬くタイプだった?』


どうだろと笑って誤魔化すけど、余裕がないのは自分でも自覚していた。
お店の駐車場に入ると、集団グループは1つしかなくてすぐにわかった。
ねるは車から降りて愛佳の元にすぐに駆け寄って行き、私は優の姿を車内から探すけど見当たらない。
不安になって車から降りて辺りを見渡すと、お店の陰の薄暗い場所に人影が。
まさかと思いゆっくり近づくと聞き覚えのある声がした。


『さっきの話だけど冗談…?』

『ううん、本気だよ。チャンスもらえないかな…』


たったこれだけの会話だけど、大体予想がついた。
きっと2人は…
2人から見えない所にしゃがみこみ頭を抱える。


『どうしてもダメなら、最後にキスしてほしい。』


やばいと思い2人の様子を見ると、優に近づく梨加ちゃんの姿が目に入った。
こんなに近くにいるんだから止めればいいのに、身体が動かない。
声もでない。
どんどん近づく2人の距離。
見てられなくて目を閉じる。


『ごめん、梨加。』


その一言を聞いて目を開けると、優が梨加ちゃんをグッと手で押して距離をとっていた。


『今、大切な人がいるんだ。』

『え?』

『最初、梨加の代わりでもいいからって言われて…私も最低だからその優しさ利用してさ…』

『…』

『でも今では、1番大切な人なんだ。沢山傷つけちゃったはずだから、もう傷つけたくないんだ。』

『今の優の顔、昔の優と同じ顔してる。その子幸せなんだろうなあ。』

『そう感じてくれてると嬉しいけど、どうなんだろ…』

『幸せだった人が言ってるんだから信用してよ。好きなんでしょ?その子の事。』

『うん。大好き。今日も飲み会来るのやめようかと思ったもん。』


こんな会話を聞いてホッとしたからか、バランスを崩して尻もちをついてしまった。
その音に気づいた2人がこっちに来て鉢合わせになる。


『理佐?何してんの?』

「別に…」

『あ…この子は理佐。今、付き合ってる。この子は梨加。えっと…』


苦笑いをしている優。
話は聞いていたけど梨加ちゃんに会うのは初めて。
気まずい空気が流れてどうしようかと思っていると遠くからねるに呼ばれて、逃げるよう2人の元から離れた。


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