恋連鎖 | ナノ
「十四郎さん……」
「……」
屋上に着くと、彼女は驚いた表情で彼を見つめる。
あたしは総悟に手招きをして、屋上に二人きりにさせた。
「何? 土方君も一丁前に青春ですか、幽霊相手に」
「あ、銀八先生…」
屋上から校舎に入るとそこには銀八が立っていた。
「あんたが、姉上をここに…銀魂高校に案内したんですかィ?」
「まぁな。最後の願いってたんだから…叶えてやろうと思って」
―あたしと同じような事言った
「ま、先生は生徒の味方だしねェ…」
フッと笑う銀八先生。
「え、ミツバさんって…」
「この野郎の教え子」
「マジでか」
「沖田君…野郎はないでしょうが」
あはは、乾いた笑いを吐けばしばらく沈黙だった屋上の方から声が聞こえ、3人は黙り込んだ。
トシ……大丈夫かな。
「教えて十四郎さん。今…誰を思っていらっしゃるのか」
その声音は、柔らかな感じとは裏腹にしっかりとしている。
隣の銀八先生は「迷うかな…」と呟いた。
「何でですか?」
「だってさ、目の前にはわざわざ蘇ってきた元カノがいるわけよ。土方の中ではさ、死んじまった沖田姉に辛い思いはもうさせたくねェはずだ。
だから…嘘をついて終わらせるか…って所だからな」
「……」
総悟は複雑そうな表情だ。
結は銀八の言葉に少し胸を打つと、それきり黙ってしまう。
そしてミツバへの返答は銀八の予想と反対だった。
「俺は…今好きな奴がいるぜ」
「…!……そう」
またもう片方の隣にいる銀八先生が「あいつやるな」なんて呟いていたのはアッサリと聞き流すとしよう。
―――それで良かったのかな……?
自然と拳がキュッと締まる。
「…分かったわ。
ありがとう十四郎さん。貴方の本当の気持ちを聞けて私嬉しかったわ。
それに私が病気だって知ってからも…貴方がいたから最期まで幸せだったの。本当にありがとう」
―――え……それでいいの……?
握りこぶしが解かれる。
ふと顔を上げて屋上へ入ってしまうと、次にトシが扉に手をかけて、一人屋上を後にした。
ここに残ったのは、あたしと銀八先生と総悟と…今にも透明になりかけているミツバさんだけだった。