恋連鎖 | ナノ
結は屋上からすぐさま抜け出す。
そして全速力で中庭に向かうと、まだそこにいた土方の腕をつかんで
「トシ! つべこべ言わずについてきて!!」
と腕を引いて走り出した。
「ちょっおわっ…ぶねぇな…。
って、結! どこに連れてくんだよ!」
突然のことでバランスを崩しつつも走る土方。
結は前を見ながら
「トシだって分かってるでしょ? 本当は自分から言いに行きたいのにヘタレだから…」
「おい今ヘタレっつったか」
「そうだよ! だからあたしがこうしてわざわざミツバさんの所に連れて行こうとしてんの!! いくら幽霊が苦手だからってミツバさんは怖がっちゃだめだからね」
「何で知ってんだよ…」
そろそろ慣れたのか、結の歩幅にあわせて走る土方。
その表情は先程より少し曇っている。
結はチラリと振り返ってその顔を見ると足を止めた。
「……。―――いいのか?」
「そんな顔していてもミツバさんは喜ばないよ…。どんな事情があるかなんてあたしには全く分からないし全くの無関係者だけど、最後の願いだったら叶えてあげたいから……」
「……」
「迷惑かもしれない。けれどもあたしがミツバさんの立場だったらどうしても叶えたいって思う。自分勝手だけどさ。
…お願いトシ、迷惑ならハッキリ迷惑って言って。それでなかったら会いに行くだけでもいいから…」
結は何かに打ち勝とうとしている表情で、土方はその表情を見ると、自分までもその気持ちが伝わってきた。
そして、掴まれた腕からその意味を読み取る。
しばらく考えた土方は、顔を上げて
「…話、させてくれ」
と言い、足を踏み出した。