恋連鎖 | ナノ
結局、トシは午前中丸々サボったようだった。
やっぱりまだ気持ちの整理ができてないんだろう。そんな状態で授業を受けても馬の耳に念仏。
おかげで会う事ができなくて、勿論ミツバさんの元へ向かわせる事もできなくて…
あたしはちゃっかり、総悟とミツバさんと昼食を食べていたりする。
「でも、姉上とこうしてまた弁当を一緒に食べれるなんて、僕…嬉しいです」
「私もよ」
―――僕? あの総悟が僕?
ププーッと笑ってしまうのを堪えて、また一つ玉子焼きを口に頬張る。
というか、総悟ってどこかおかしいんじゃないか?と結は思う。
なぜなら、死んだはずの姉とこうして会っているというのに、涙も流さないしむしろ笑顔。それはそれでいいのだが、もうちょっと違和感というものを感じ取ってほしいな、なんて
当事者でもない結は考える。
―――まぁ、総悟が今幸せならそれでいいのかもしれない。ミツバさんもきっとメソメソされるよりも笑顔の方が嬉しいだろうな…
そんな風に考えてもう一つ玉子焼きを口に入れる。
「それにしても土方のヤロー…どこ行っちまったんでィ? 今まで丸々午前サボるなんて無かったのになァ…」
総悟の呟きにミツバさんはピクリと小さく反応する。
あたしはそれを見て、食べ終わった弁当箱を片付け終えると、屋上から中庭や校庭を見回した。
「……午後には会えるかなぁ…?」
根拠は無いけれど、彼はきっとミツバさんに会いたがっているだろうと結は思う。
きっと国語資料室で銀八先生からミツバさんがあたしに言ってくれた事と同じことでも聞いたのだろうと勝手に推測する。
だからこそ、彼女の意思を大切にするんじゃないか…と
というか、
「あの、ミツバさん…」
「なぁに?」
「銀八先生って何か関係あるんですか?」
なんとなーく…だけど、まさかトシの前に付き合っててその元恋人同士だからー…何て事は……
「あるぜィ。何せ、姉上を病院まで運んでくれたのは野郎だからでィ」
「そーちゃん、先生のことをそんな風に呼ばないの!」
モゴモゴとご飯を食べている途中の総悟がそう答える。
とりあえず自分の予想が外れていた事に安心した。
「それで…。でも、何で今回の事を知ってるんですか?」
するとミツバはちょっと意地悪く笑って
「私がこっちに来たときに初めて会ったからなのよ。先生、怖いの苦手みたいだから驚いていたわ」
そうフフッと笑う。
―――へぇー先生って怖いの苦手なんだ。
つられて結も笑った。
「ありゃ、土方さんじゃないですかィ?」
「「え?」」
そんな中、偶然総悟が見ていた先は、学校の中庭だった。