恋連鎖 | ナノ
そんなあたしの気持ちを察したのか、ミツバさんは
「貴方のせいでもないんだから、思い詰めないで」と微笑む。
そして彼女はすべてを悟ったかのようにもう一度微笑むと、語りだした。
「…分かってるわ。彼のことが好きだったんだもの。二人の様子を見ていれば分かるわよ」
ドSな弟を持つ人とは思えない、寛大な心と笑顔。ていうか、
「いや、付き合ってはいないんですが…」
「えっそうだったの!?」
―――本当、総悟とは正反対な人だなぁ…。
ミツバさんは「私ったらっ」と、ちょっとあたふたして恥ずかしがっていた。
なんて可愛らしい人だ。
―――――キーンコーン……
「…あ、チャイム」
「授業終わったのね。……十四郎さんは、教室に戻ってしまったかしら」
「分かりませんよ」
心配そうに呟くミツバに結は手を伸ばす。
「一緒に行きましょうよ!! そんで、ミツバさんがしたかった事をしましょう?」
けれどもすぐに彼女は首を振る。
「人前にはあまり出ないようにしたいから…」
それを聞くと、結は手を伸ばすのを止め
「じゃああたし、トシを呼んできます!
そしてきっちり話をつけましょう?」
と言い、屋上を後にした。
…
「……」
結が出て行った先を悲しげに見る。
ふと自分の手に違和感を感じ、ミツバは手を見た。
するとそれは少し透けていて、屋上のコンクリートが自分の手を通してほんのりと目に写った。
「…もう死んじゃってるのに、怖いなんて…寂しいなんて、おかしいわよね」
誰かに問いかけるように、ミツバは一人呟いた。