恋連鎖 | ナノ
「トシ待って!!」
走って追いつくとガシッと彼の腕を掴む。彼は止まってくれたけどこちらを見てくれない。
結は静かに
「あの人のこと…?」
と尋ねる。
「……んでんだよ」
「え?」
「死んでんだよ。アイツ…2ヶ月前に」
「はっ!!?」
思わず大声を上げてしまい、廊下にチラチラといる生徒は一斉にこちらへと振り返った。
結はそれに気づくと、急いで土方を引っ張って人気のない階段の踊り場へ向かう。
「どういうこと?」
「言ったままの意味だよ。
アイツは…沖田ミツバは、2ヶ月前くらいに病気で死んだ。本当はここにいるわけねぇんだよ」
「……まさかぁ」
冷やりと苦笑を浮かべれば伝う汗。
けれど、土方がそんな嘘をつくような人間でないことを知っている結は、そう一言言った後に「そうなんだ…」と消えるような声で呟く。そして次にどう切り出したらいいか分からないため、しばらく沈黙が続いた。
という時だった。
「おい何青春してんですかテメェらは。
それよりもさ土方君、沖田の姉ちゃんに会った?」
「!!? テメェなんで知って…!」
「会ったんだな。まぁ訳はあとで話すから。
というかもう授業だから、チャイム鳴る前に教室に戻っておけよ――」
銀八先生はそのままヒラヒラと手を振って姿を隠した。
「何か…知ってるみたいだね」
とあたしは呟いてトシの方を見る。
けれども彼は聞いていなかったみたいで、そのまま先生の後を追いかけてしまった。
呼び止めたけどすごい速さで走っていくものだから、あたしもサボる覚悟でその後を追いかけた。
そして、ちょうど良くチャイムが鳴るのだった。