恋連鎖 | ナノ


「………」

ひたひたひた

「………」

ひたひたひた


―――何故


「あの、えっと、桂君にエリザベスさん…」
『エリーでいいよ』
「じゃ、じゃあエリー」
「コタロでいいよ(裏声)」
「じゃ、じゃあコタロ」

なんでこの二人と一緒の方向に帰ってるの!?それにかつ…コタロ、その裏声は一体何なのだ。エリーに便乗したつもりか。

「コタロたちってこっちの方に住んでるの?」
「まあな。あまり登下校時刻が一致しないからお互い分からなかったのだな。俺は案外早くに家を出てしまうからな」
「ほー」

エリーと済んでいる事は確定ってことで。

それにしても、一向にあたしと道を違える事は無い。まさか…いやいやまさかね。
たしかにあたしの今住んでいるマンションはたくさん部屋があるけれども、運よくかつ…違う、コタロが同じマンションに住んでいる可能性なんて無きにしも非ず。

他愛もない話を続けていれば、そろそろあたしのマンションが見えてきた。
案外話してみれば二人ともまともな性格をしていた。第一印象が不思議な二人だったからこそなのかもしれないが、またはあのクラスの空気に触れるとどうもおかしくなってしまうのか。


「じゃああたしはここだから」

そう言ってマンションの中へ入ろうとした。が、

「いや俺もここだから」

自動ドアがスーッと開いて二人は入ってくる。まじか、まじで同じマンションだった。ビックリだよ。

「そ、そうだったんだー」

上ずる声には触れないでもらいたい。そうやって焦った心境を隠せないまま、エレベーターに乗りこむ。

「コタロたちは何階?」
「5階だ」
―――階まで一緒なのかい

今度は逆に会話がなくなってしまったエレベーターの中。先ほどまでは広い道にいたからいいものも、こんな狭い中でこんな空気、あたしにゃー耐えられません!

チン、と音が鳴ってエレベーターを下りる。先に降りてもらえば『どうも』と律義にエリーからお礼を言われた(書かれた?)

それから先は詮索しなくとも、彼らがどこの部屋に住んでいるかくらいわかるだろう。

しかし、黙って進んで行けば行くほどあたしの住む部屋に近づく。


―――もしかして……


「それじゃ俺はここなので」

「あたしの隣の部屋の桂さんはアンタか!!!」

「む、結は俺のお隣さんというやつだったのか…!」

「そしてアンタも知らなかったんかい!」

盛大な突っ込みはあたしには難しいよ。新八君に尊敬の気持ちを与えます。

大きなため息をつけば「ちょっと待ってて」とコタロに言う。家の中に入って、例のブツを持ってくれば、律義に待ってくれていたコタロに差し出した。

「こんなものでもプレミアが付けばいい値で売れると思うので」

かといってファミコンは無いよねファミコンは。しかも初代とは。全く使っていないから新品のように輝いて見える。
確かに売ればマニアには高く買ってくれそうだ。けれどももしあたしがコタロの立場だったらと考えれば「え、何このゴミいらない」とドン引きである。

恐る恐るコタロの表情を覗き込もうと視線を上げた。

ワナワナとファミコンを手に震えるコタロ。

怒る?怒ってファミコンを床にドガシャアアンって叩きつける!? 待って、渡したあたしが言うのもなんだけれども、売ればきっと売れるからいい値で!

「これはっ…初代の」
「……」

ゴクリ、生唾を飲み込む。

エリーもじっとファミコンを凝視して居て、その白眼には血走った何かが見える。それ被りものじゃないの!?


「感謝する!!!」
「へぇ!??」

素早くファミコンをエリーに手渡せば。両手でコタロはあたしの手を握った。
思わず身を逸らしてしまうあたしだったし、その上手の握力が強くて「うっ」と唸ってしまうあたしだったが、コタロを見ればキラキラと目が輝いている。

「まさかこんなところで手に入れられるとは…俺もつくづくツイてるみたいだな、エリザベス」
『星座占いでは1位でしたしね』

星座占いって。



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -