恋連鎖 | ナノ


散りゆく姿に美を感じるだなんて、日本人も粋なものだ。




休み時間、相変わらず大きな白い犬が寝ている中庭に、あたしは焼きそばパンを頬張りながら座っていたら、ふと桜の花びらが前を過ぎった。
そういえばまだ春である。
めまぐるしい日々を、良くも悪くも送っているおかげで季節を意識して居る暇が無かったのかもしれない。それにしても綺麗だ。銀魂高校にも、こんなに大きな桜があっただなんて。

「お花見なんてやってみたいなー……」

「お花見したいアルか?」

「まあやったことないし(多分)……。――――――あれ!?」

一人と一匹だったはずの空間に、突如神楽ちゃんの声が乱入してきて、勢いよく振り返れば、神楽ちゃんはいつの間にかそこにいた大きな白犬に乗っかってニコニコ笑っていた。

「いつの間に…」
「定春が私を呼んでいたネ」

はむっと神楽ちゃんは大きな大きなパンをどこからか取り出して頬張った。
白犬から飛び降りてあたしの隣に座る。白犬もそのまま腰をおろして、また春の陽だまりに包まれながら目をつむった。

「定春って…?」
「あ、そっか、結にはまだ紹介してなかったアルナ。このでっかい犬が定春言うアル。可愛くていい子アルヨー。きっと結もすぐ気に入るネ」

ねー定春ーと頭を撫でるしぐさから、きっと神楽ちゃんに一番なついているのであろう。
犬は飼い主に似るというから、なんだか定春ともやっていけそうな気になった。

「実はこの学校来た時に一回会ってるからさ」
「そうアルか!さーだーはーるぅー、私よりも先に結と仲良くなっていたとは薄情アルヨ」
「くぅーん」

こらこら睨みつけない。

はははと陽気に笑ってまた焼きそばパンを頬張る。そろそろなくなりかけた時、神楽ちゃんはこちらに向き直ってパクン!とあの大きなパンを一口で平らげれば、口を開いた。

「で、花見したいアルか?」

「あ、その話?…そーだねー…折角だしやりたいな」

もうこのクラスの人たちとのお花見のチャンスはやってこないのだから。
学生の内にはしゃぎたいという気持ちがあったが、それ以上にただ皆と一緒に何かしたいと思った。

…それに、銀八先生との事について、距離を近づけたかったり…それ以上に、つい昨日の“あの事”についても、早期解決をしたかった。

そのチャンスが欲しくて、神楽ちゃんの質問に答える。


「ふっふっふ…」
「!?」

「実はネ結、ちょうど姉御達とそういう話を計画してたところだったアル」



ということで今週末、花見は開催決定したのである。






春っていいよねー




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