恋連鎖 | ナノ



理事長に呼ばれていた。高杉の簡潔な説明で俺はただ足を理事長室の方に向ける。
何の用なのだろう…。俺、なんかやっちまったっけ?
今までだって何か問題があってもある程度は目をつむってくれていたババアだが、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れたー…とかだったら嫌だな。

まるで先生に怒られに行くかのように重い足取りで、理事長室をノックしようとする手が一瞬躊躇われた。
しかし俺も子供じゃねェんだ。何があろうと覚悟を決めてコンコンと扉を叩いた。


「入りな」

威圧感のある声に体がピクリと反応する。やっぱ怖ェな…。

弱腰になりながらも「失礼しまーっす」といつもの雰囲気で入る。そしたらババアは意外にも穏やかな表情で(いや、いつもと変わんねェが)どんと座っていた。

その机の上には何やら書類のようなものが、大きな封筒の中に入っているのだろう。
白いそれをババアは持って俺のほうに差し出す。


「なんだよコレ」

「口のきき方には気をつけな。―――転校生の書類だ。アンタのクラスに編入する事になったんでね、しっかり面倒をみな」

「はァァ!!? この時期に転校って…訳ありか?」

面倒くさい事は嫌いだ。とびっきりの問題児だったらこっちが困るだけで願い下げだ。まあ文句を言ったって聞き入れてはくれないんだろうが…。
とりあえず反論はしてみる。


「いんや、別にこれといった問題も何もないごく普通の子さね」

「そうか…じゃあ何で俺のクラスなんだ?」

「本人からの希望だったんだよ。園江結のいるクラスに入れてくれってさ」


結の名前にピクリと反応する。

いけない、ババアにだって流石にばれたらおしまいだ。そう考えて冷静を装う。
だが、なんで結なんだ。


「アイツに関係ある奴なのか?」
「さァね。あたしにも分からないよ。……まあ個人的希望だからねェ、ただ事じゃあ無いだろうよ。
しっかり見張っとくんだよ」


ババアの力強い言葉に、俺もなんだか緊張が走った。

時期といい、希望といい、どこか…おかしい。
いや、深く考えないでおこう。何があろうと俺が何とかすりゃあいいんだ。元々問題児クラスの3Zに転校生の一人や二人、俺が何もしなくともアイツらが何とかしてくれるだろうし。

甘い考えかもしれないが、俺は生徒を信じることにした。


書類を貰ったため、話を一通り聞いた俺はとりあえずここを後にした。
あとは自分の問題なのだから。



職員室に戻る。
昼休みはいつの間にかあと5分と迫っていた。なんてこった、俺飯食ってねェよ…。結と一緒にお粥でも食っときゃよかったな。

後悔しても遅いから、机の上にあらかじめ朝から置いてあったコンビニに売っているパンを一つ頬張った。甘いイチゴ牛乳も付け足せばなんとか持つだろう。




―――結、起きたかな。


明日は元気でいてほしいと願う。出席簿に欠席とチェックされた園江結の名前をなぞって、そのまま俺は教室に向かった。








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