季節物




落ちてくる花びらを空中でキャッチすると、その花びらに願い事をすれば叶うって言うじゃない?


16歳にもなってそんな事やっているあたしは周りから見れば恥ずかしいかもしれないけれど
ただ今、一生懸命桜の花びらを捕まえようとしている真っ最中。



あぁ、入学式が終わって何やってるんだか…


というか、入学式なんて面倒だから出てないけれどね。



いわゆるあたしはサボり魔で、中学の時だって気に食わない先生の授業の時は、人気のない中庭や屋上で寝ていたりしていた。


そんなこんなで今も誰もいない学校の中庭で花びらを捕まえようとして頑張っているのだが…


「ちくしょー…どうやれば一回で捕まえられるのよー」


一瞬イラっ(☆)とくる。



でもなんだかその花びらを捕まえたくなって…


もう一度風が吹くと、あたしは上を見上げる。


その時、さっきとは違う風景が目に入った。


「え…」

「こんな所で何やってんだよ。…新入生か?」


「あ、え…あ………!?」


―――まさか、見られた…!?


「あ、そうです。こんにちは…」

「ずっとサボって花びら捕まえようとしてただろ。入学式行ってねぇよな。」

「!!」


眼帯をした人はジリジリと近づいてくる。


まさか生徒会の人とかそんな感じなのだろうか。
それともこの人もサボり魔なのだろうか。

雰囲気からして新入生ではないことはよーく分かった。



―――あぁ、入学式当日から目をつけられちゃったなぁ…


悲しくなってため息をつく。



どちらにせよ、きっとこれからはこの人に弱みを握られて一生パシりやら奴隷やらとして使われるんだ…


そんなマイナスな考えを持ってあたしは目の前の人を見る。



「で、何願おうとしてたんだ?」



突然その人はあたしに質問をする。


「え…」


「桜の花びらを空中で捕まえたら願い事叶うってやつだろ? 暇だからさっきからそれやってるんだろうがよ」


「ていうか、いつから見てたんでしょうか」


恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……。

顔が火照って倒れそうになる。

目の前の先輩らしき人は「最初から」とアッサリと言った。



「じゃあ声くらいかけてくれたっていいでしょうに」



あたしはムスッとなって言う。

彼はククッと笑い、

「声かけずらかったしよぉ…それに、見てて可愛かったからな」

なんて恥ずかしいことをまたもやアッサリと言ったのだ。




「あとな、ピョンピョン跳ねてたけど…ホラ」

「?」


彼の指にはピンクの桜の花びら。



「最初からお前の髪にひっついてたぜ」




フッと笑って彼は花びらをあたしに渡すと、その場から去る。





「何よ、名前くらい…言ってからいなくなってよ」





だんだん顔が熱くなって、心拍数も上がっていく。



―――でも、願い事が叶うのって本当だったんだ。




彼には言い逃したけど、あたしの願い



『新しい恋ができますように』


今度またサボったときにでも見かけたら、ちょっと話しかけてもいいよね?





山崎→










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