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においの前後。ページごとに視点が変わります。ラストは甘々。





昼間池袋に行ったらシズちゃんがケーキ屋にいた。
金髪ロシア女と楽しそうにケーキ食べさせっことかして。ムカつく。

俺とシズちゃんはセックスしてる。
でも恋人ってわけじゃない。もちろんセフレでもない。そもそも友達じゃないし。
だからシズちゃんが誰といようが、何をしようが関係ない。
でも、イライラする。イライラして仕方ない。全部めちゃくちゃにしたい。

仕事前に見つかると面倒だから路地裏の階段で気配消してたけど、表通りに出てケーキ屋のショーウィンドウへ鋭い視線を飛ばす。
目が合った瞬間に口元を歪ませ走り出せば、怒声と共にガラスの割れる音がした。
背後から飛んでくる物体を避けながら路地へ駆け込み、背後のシズちゃんにナイフを投げつける。刺さらないのは重々知ってるから目眩まし程度のつもりだったけど、まさか避けずに突っ込んでくるとは。

で、気付いたら灰色の空と痛んだ金髪が目の前にあった。ほっぺたが熱くて、口の中に鉄の味が広がって、殴られたと理解する。
「ひどいなぁ、いきなり殴るなんて」
「あぁ?テメェが池袋に来んのが悪りぃんだろ、ノミ蟲」
「池袋はシズちゃんのお庭じゃないよ」
「テメェの家でもねぇよ」
いつもの喧嘩。いつもの会話。
でも襟首つかまれて凄まれたとき、鼻先に甘い匂いがした。ケーキじゃない、甘い匂い。
イライラしてシズちゃんの顔に唾を吐く。
そしたらまた、殴られた。
あー…鼻血でた。最悪。

工事の足場が組んである反対側の壁まで吹っ飛ばされて空を見る。
曇り空がどんよりと、俺の気持ちに同調して重く広がる。バカみたい。
「アハハハハ」
「あぁ?」
シズちゃんは不機嫌そうな顔で俺の腹に革靴を押しつける。痛い。
「なんだよ、気持ち悪ぃな」

「 み じ め 」

ゆっくり言いながら、渾身の力で足場を蹴り倒す。
派手な音を立てて崩れる足場に気を取られてるシズちゃんを引き倒し、反動で立ち上がり駆け出す。

「シズちゃん。お願いだから、死んで!」
飛びっきりの笑顔で叫んだ。

あーあ。不毛な時間過ごしちゃった。
早く四木さんのとこ行こう。慰めてもらお。


こんなモヤモヤ、クソくらえだ!




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