*3

「ね!手繋ごう?」
「お、おう」
戻る手段が分からないなら仕方ない。だったら大いに楽しむべきだ。シズちゃんもまんざらじゃなさそうだし。
真っ直ぐ帰るのは勿体なくてコンビニやら、本屋やらに寄って帰った。

最近は新宿で逢ってたから、シズちゃんの家は久々。
部屋に入って座ると、シズちゃんが微妙な距離をあけた。心なしか顔が赤くて俯いてる。そんな反応に俺の中でムクムクと悪戯心が湧き出す。


「ほぉら!シズちゃん、おっぱいだよ☆」
シズちゃんの膝に跨り、胸を顔に押し付ける。
「んぷっ…おまっ!はしたねぇ!!!」
焦りながら顔を背け、俺を下ろそうとする。ウブで可愛いなぁ。

「シズちゃんにぃ、俺の初めて、あげるよ?」
唇に人差し指をあて、上目遣いで首を傾げる。我ながら中々の媚態だ。こんな可愛らしい俺に誘われて堕ちないのは夢見がちな童貞くらいだね。
「バッ…馬鹿野郎!そういうの軽々しく言うな!!」
わ!童貞発見!!しかも大事にしろだの、遊びじゃないだのとブツブツ言ってる。俺が元々男だって忘れてない?とゆうかそれ以前に、
「他の人としてもいいの?」
「あ?」
「だから!!俺がシズちゃん以外に処女あげちゃっていいの?」
この童貞は全然分かってない。俺がシズちゃんに迫ってる意味。シズちゃんだからなのに。
「よくねぇ。ぜってぇイヤだ」
「じゃ、なんで拒否るのさ!?」
「…壊しそうでよ、こんな細ぇ体…」
俯いたままでボソボソ呟き、俺の体を抱きしめた。
あぁ――この化け物は、俺なんかよりずっと人間らしいんだ。優しい、優しい化け物。でも俺は、その優しさに唾を吐く。

「そーゆーの、やめてくれる?不愉快」
冷めた俺の声で顔をあげたシズちゃんの首元にナイフを当てる。
「目の前にいるの、誰?折原臨也だよ。シズちゃんが死ぬほど大好きで、殺したいほど大嫌いな折原臨也。男だろうと、女だろうとさ」
ゆっくり三日月のように唇を歪ませ、ナイフを横に滑らせて浅く皮膚を切り裂く。
「っ!!」
流れ出た血を舐めあげる。
「いつもみたいに殴りなよ、ほら」
出来る限り男の声色に近付け、耳元で囁く。

ガツン!!
一瞬の衝撃と、頬に感じる灼熱。鼻の奥から流れる液体が口まで垂れて、鉄の味が広がった。

条件反射で殴ってしまい、呆然とするシズちゃんに満面の笑みで、
「良くできました」
と言って頭を撫でる。
「ね。俺、壊れないでしょ?」と付け加えれば苦しいくらいキツく抱き締められた。想像以上にシズちゃんが傷付いた顔で、少しやりすぎたかなと思った。
「バカなことすんなよ」
「シズちゃんがバカなこと言うからだよ」
ちょっと可哀想になって、キスしてあげた。
鼻血まみれだけど、お互い気にせず貪る。ほっぺは痛むし鼻血も不快だけど、シズちゃんに与えられた痛みなら喜びになる。波江さんのブラウスを汚す血まで愛おしい。
「っんう‥ふ…ぁ」
「血、すげぇな。大丈夫か?」
唇を離すとシズちゃんの口元が朱に染まってヤラシイ。
「うん。いつもこんなだし」
「悪ぃ…」
「次謝ったら、他の男んとこ行くから」
「それはマジで勘弁してくれ」
ふふっとお互い笑いあって、やっといつもの2人に戻れたと思う。

「じゃ、抱っこ。ベッド連れてって?」
「かしこまりました、お姫様」




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