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「ちょっと!新羅いる!?」
勝手知ったる他人の家をズカズカ進む。リビングのドアを開けると新羅とセルティ、そして何故かシズちゃんがいた。
「え、どちらさ「臨也ぁ!!」
新羅の声を掻き消してシズちゃんの怒声が響く。ソファーを乗り越え、俺の襟首を掴み上げた。
「ノミ蟲!池袋に何しにきた!?あぁ?…………………あ?」
しばらくフリーズしたシズちゃんに持ち上げられたまま、ぷらーんと洗濯物状態。
「ねえ。そろそろ下ろして、シズちゃん」
「あ、ああ」
下ろされて身なりを整え、新羅に向き直った。
「なんなのさ、この薬?」
「え?えーと、状況を教えてもらってもいいかな?……臨也?」
半信半疑の新羅に経緯を説明する。本日2度目。もう飽きた。


「なるほどね。こんな荒唐無稽な話、普通は信じないけど森厳ならやりかねないな。それに静雄が臨也だって言うからには臨也だろうし。……でも申し訳ないが、こちらには何も情報無いよ」
「やっぱりね。期待してなかったよ」
「はは。一応採血させて貰っていいかな?調べてみるよ」
「うん。よろしく」
新羅が注射器を取りに奥へ消える。


「で、君達なんなの?人を妖怪みたいな目でみて。てゆうかなんでシズちゃんいるかな?」
好奇心と少しの恐怖心――そんなものが折り混ざった表情。化け物と妖精がするカオじゃない。まぁ1人は顔なしだけど。
一回り小さくなっただけで、外見の変化はない。波江さんだって分かったし。
それをコイツらは…
[[今日は静雄と子犬を見に行ってきたんだ。それより本当に臨也なのか?]]
「シズちゃんが証明したでしょ。ていうかなに、子犬って。デート?シズちゃん死にたいの?あ、いつもの追いかけっこする?あはっ!今ならきっとシズちゃん、婦女暴行で捕まっちゃうね!今度は冤罪で済まさないよ」
俺がこんなときに浮気とは。
さっきからポカーンとしてるシズちゃんにナイフを構えた。

「はい、そこまで。臨也腕出して」
「ちぇー。新羅、セルティとシズちゃんが浮気した」
戻ってきた新羅がバンドを腕に巻いて、チクッと痛みが走る。
「少なくともセルティは浮気じゃないよ。きちんと報告あったからね」
「じゃシズちゃんは浮気ね。サイテー」
「臨也、検査したいんだけどいいかな?」
「へ?なにを」
「身体。完全な女性の構造になったのかをさ」

「ダメだっ!!!」
俺が答える前に、今までだんまりだったシズちゃんが立ち上がって叫んだ。
「ちょ、なに勝手に答えてんのさ」
「テメェは良いのかよ!」
「良い悪いじゃないよ。自分の身体がどうなってるかも分かんないのに。浮気男には関係ないだろ」
「だからってよぉ…つか浮気してねぇよ」
「子犬見に行くなんて俺知らないよ」
「テメェ昨日電話出なかったじゃねぇか」
「だから、気失ってたの!」

「まあまあ。何も今すぐじゃなくていいよ。落ち着いたら連絡して」
「よろしく。近々お願いするよ」


[[静雄、ちょっと臨也を貸せ]]
「あ?いいぞ」
セルティが自分の部屋に引っ張り込んだ。
「なに?珍しいね」
[[何か欲しいものはないか?下着とか服とか、困ってたら言ってくれ]]
「ありがとう。馴れるまで買い物頼むかも」
明らかに俺を毛嫌いしてるセルティに心配されるとは…結構重症なのかな。


ちょっとブルーになって部屋をでる。
「帰んぞ、ノミ蟲」
悔しいかな、この男は常にブレない。
そこに確かな安心がある。




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