人形の恋

海賊静雄×人魚臨也





時は大航海時代。人々は新大陸に思いを馳せ、海に希望を抱く。
そんな時代に1人の悪名高い海賊がいた。あらゆる海に名を轟かせ残虐非道と恐れられた海賊、黒ひげ。
海軍も手をこまねく程の海賊団をもち、それを纏める切り込み隊長もまた喧嘩人形と謳われる悪名高い男だった。
喧嘩人形こと平和島静雄。
本当は暴力が大嫌いな静雄だが、短気で街で暴れていたのを昔馴染みの先輩に拾われ、他に行くあても無く海賊団に入った。本人がその力を忌々しく思おうと、海賊では認められ確固たる地位を手に入れた。


静雄は補給に立ち寄った港町をふらふらと歩いていた。酒場も花街も興味をそそらず、人気のない海岸へ向かう。
適当な岩場を見つけて酒を呑み、煙草に火をつけた。
一息つくと何処からか血の臭いがする。商売柄敏感に反応し、辺りを見回す。
岩場を越えると、陰に身を潜める青年を見つけた。
「おい、何してんだ?」
声をかけると青年はビクッと肩を震わせる。
「おい…」
静雄が手を伸ばすと青年は手にしたガラス片で襲いかかってきた。
「っ!あぶねぇなっ!!」
寸での所で躱わし、素早い動きで凶器を握る手を捕らえると静雄が想像するより細かった腕がぬるりと滑った。
「うっ‥」
「怪我してんじゃねーか」
掴んだ腕には切り傷があり、血が滴る。
「は、なせ!」
青年は腕を振り解こうと必死に身を捩るが、静雄に掴まれた腕はびくともしない。
「手当てするだけだ。暴れんな」
静雄は持っていた真水で傷口を洗うと自分の袖口を破き、丁寧に巻き付けた。
「ほらよ。なんもしねーよりマシだろ。つか服もねぇのか?」
袖を破いたシャツを脱ぎ、上半身裸の青年の肩にかける。
青年はシャツを握り、呆然とした表情で静雄を見つめた。
「ビビらせて悪かった。じゃあな」

静雄が岩陰から立ち去ると、残された静寂な闇にピチャンと水音が響いた。




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