琢磨は死んでいた。
確定された事実だった。
捩曲げようすらなかった。
今日本日この場にて、《ギルド》は全滅したのだった。


俺は真っ赤になって永眠する琢磨を見つめる。


嘴のような、痕。
要害堅固を殺したものと同じだった。刃も同じであり、刃筋も同じだった。
抜き身の仕方は、*+αの隷属剣術そのものだ。


「こんな……こんなことって……………ッ」


萵苣は肩を震わせる。今にも叫び出してそうな顔をしていた。


「――――魚」


そこで、スケベ女は俺の名を呼んだ。いつもの蕩けそうなほど優しい声音でも態度でもない。純然たる眼差しは、窮めた鋭さで俺を射抜いた。


「正直に答えて」


次の瞬間、俺は目を見開く。


「今起きてること、貴方に関係があるんじゃないの?」


「Excellent! 実に正しくその通りだよ」


嘴が、ギラリと光った。
要害堅固や切磋琢磨を殺したであろう嘴のような剣が、スケベ女の首に宛がわれる。一番ドアの手前にいたスケベ女が、外にいたそのきらびやかな軍服の男に押さえられた。
俺は小さく舌打ちをする。


「やあ、はじめましてだね、《回遊魚》先輩。そんな怖い顔しないでくれるかい? ミルクでも飲んで落ち着きなよ、Hey」


焦げ茶色の強い赤毛、海のような碧眼。悪戯めいた笑みを浮かべている男が肩を竦めて俺を見つめている。深い藍色の軍服に深紅のズボン……一介の兵士と表現するには、あまりに一目置いてしまうような端正な素材の軍服を着ているが、握る嘴のような剣で確信を持てる。

きっとコイツが。
この惨劇の実行犯。


「あんた……誰?」
「Oops! 俺としたことが自己紹介をしてなかったね。はじめまして先輩。俺は*+αの次期永世トップ。啄木鳥さ。以後お見知りおきを」


俺は“*+α”という単語に目を見開いた。


「い、魚……こいつ、お前の“追っ手”なのか?」
「…………萵苣……それは」
「ああ、まだお仲間がいたんだっけね。してやられたよ。どうせならあんた以外全員殺しておくんだった」


ぶわり、と。身体が熱を帯びる。


「やっぱり、あんたがここの連中を殺していったんだな」
「Yes,まあ……俺一人じゃないけどね、そこで死んでる二人も一緒にだよ」


やつは顎で地に横たわる男二人を示した。確かに《ギルド》じゃ見たことのない顔ぶれだ。白い軍服と黄土色の軍服を着た、歳もそう変わらないだろう男だった。


「一応聞くけど…………あんたが二人を……?」
「殺してないって。切磋琢磨に殺られたんだ。やってくれたよ、μtoの実戦奴隷ごときが。殺られるこいつらもどうかと思うけど」


“Damn!”と顔を渋めて啄木鳥は言った。



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