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さっきから、不思議に思っていることがある。
それは、俺が刀を振るうたび。
琢磨が脚で敵を薙ぎ払うたび。
次第に増していく存在感だった。

――弱すぎる。

そう。
先程から相手取っている奴隷狩りの連中が、ふざけているのかと叫びたくなるほどに弱すぎるのだ。
踏み込みが弱い。
力が足りない。
愚劣なまでに鈍足で、武器を握る力もない。
持つ鎖の扱い方もわからない、不慣れな動作。
いくら奴隷狩りが戦場向きではないからとはいえ、ここまで弱いのは有り得なかった。
武器を持っているのに、それすら満足に扱えないなんて酷すぎる。
本当に不思議なことだった。

人数が多いだけの集団。

そう評価するしかない、貧弱な集団だった。

人数が多いだけの、貧弱な集団。

なのに。

釣り合わないほどの執着心が、瞳の中をうごめいていた。どれだけ刀を振るおうが、どれだけ脚で薙ぎ払おうが。
諦めない。
何度でも立ち上がり、襲い掛かってくる。
暗示にでもかかっているかのようだった。

気味が悪い。

死ぬことを恐れていない。生も何もありゃしない。
ただただ盲目的に、俺と琢磨に迫ってくる。
腕が裂けようが。
脚がもげようが。
血が流れようが。
そんなのは関係ない。
興味すらない。
純粋に純白に純真に純潔に。

俺達を阻むために立ち向かう。


「琢磨!」


俺は琢磨を呼んだ。その目を見ると、やはり疑問が浮かんでいる。こいつも不思議がっているようだった。目の前の奴隷狩りの、投げやりな行為を。


「なんだこいつら、倒しても倒しても起き上がってくる」
「同感だよ。気味が悪いったらないね」
「ゾンビと戦ってる気分になってきたわ。本当にこいつら奴隷狩りか……?」


琢磨の言葉に、俺は眉を寄せた。

確かに。
こいつらは本当に奴隷狩りなんだろうか。

俺はこいつらのような目を、見たことがある。


盲目的な目。


世の中を皮肉んで残酷んで諦観だような目。
霞んだ瞳孔。
生気の伺えない色。
何も考えられない、考えたくはない。ありったけの力でありったけの感情を押し殺した、そんな眼差し。
冷えた、瞳。
事務的に生きるような――――――――、冷えた瞳。


「…………ぁ」


俺は、目を見開く。




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