「いただきます!ww」
「「「いただきます!」」」


毎朝の恒例の琢磨の挨拶が終わったあと、手を鳴らして食事に取り掛かる。
ディスパラノイア街に来て三日目の朝。野菜や卵やハムを挟み込んだマフィンに、牛乳、バナナヨーグルトが目の前に並んでいた。


「これってあれよね。西の方の国で食べられているマフィンじゃない?」
「詳しいな硝子ww」
「スケベ女って妙に地理に詳しいよね。ディスパラノイアのことだって熱弁してたし」
「あらー、魚、惚れ直しちゃったかしら?」
「まず惚れてない」
「ふふ、残念。なら惚れさせてあげましょう」
「断固拒否だ」


俺は牛乳を飲んでスケベ女を睨みつける。
スケベ女は相変わらずの柔らかい笑顔を浮かべたまま。余裕の意気を見せ付けて来る。
なんていうか。
ちょっと悔しい。


「そういやさwwww」
「ん?」
「なんでお前硝子のこと名前で呼ばねーの? スwwケwwベwwおwwんwwなwwとか、マジウケるwwww」
「なんか呼びたくないんだよ」
「酷いわよねえ。今まで一度も名前で呼んでくれたことがないの、あたしは何度それで枕を涙で濡らしたことだか」
「笑顔で嘘つかないでくれる?」
「貴方へのあたしの誠意に嘘偽りは無いつもりよ」
「つもりなんだね」
「つもりなの」


硝子は「ごちそうさまでした」と両手を揃えて辞儀をする。その動作に、また何人かの人間が見蕩れてしまった。
シャンと伸ばした背筋。
白くて細い両手の指。
礼に合わせて揺れる髪。
伏せられた長い睫毛。
まるで神聖な儀式を見ているかのように、場の空気は張り詰めた。
見慣れている萵苣と俺は、横目でスケベ女を見遣ったあとマフィンを口に入れる。

硝子は幸せそうに微笑んで席を立った。


「じゃあ、あたしは行くわ」
「どこに?」
「どこって、外」
「えぇええぇっ、おねーちゃん外出るのー!?」
「危ないって!」
「やめといたほうがいいっすよ硝子さん!」
「やめといたほうがいいっすよ硝子さんww」
「ボスはなんでそんな緊張感ないんだよ!」
「琢磨さんのバカ、チビー!」
「チビじゃねぇよww そんなに変わんねぇだろwwww」
「軽く二十センチは違ぇし」
「前後三十センチは俺ん中じゃ身長差に入んねぇ\^o^/」
「メチャクチャっすよ!?」


げらげらとバカみたいに笑う琢磨に、周囲は呆れたツッコミをいれる。そしてスケベ女がまたクスリと笑った。


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