《そこ》は、本当に、冷たくて暗いところ――――――――……。



「ふゎぁ……こんばんは、騒禍ちゃん。……寝起きでちょっと眠いかな。……ふざけてないよ、それに今は何時だと思ってるんだい? 夜中の三時だよ? …………ははは、そっかあ、じゃあ後でチョコレートでも食べるよ。――で。君が僕に電話してくるくらいだから、彼を見つけたんでしょ? へぇ。意外。あっ、わかってると思うけど、騒禍ちゃん、…………うん。分かってるならいいよ。……確かに君だけじゃ不安だなあ。僕のとこから何人かサポートとして派遣してあげる。……別に企んでなんかないさ、当然のことだよ。え、いや、あげないからね? うちの大事な商品だもん。傷つくなあ。……じゃあこうしよう。仕事の礼に一人好きな子あげるから。……ありがとう、助かるよ。騒禍ちゃんが頼りだったから。そういえば、切磋琢磨の方はどうかな? ……ああ、やっぱりか、そうだよね……。えっ、なんかその響きクールだね。いいかも。………うーん、それは面倒だなあ。最悪纏めて処分しちゃっていいからさ。……僕も十分残酷な人間だと自負しているけれど、君は本当に残酷だね………そんなの知ってるよ、昔っからね。でも本当に気をつけてよ? ……えっ、だって騒禍ちゃん大事だし…………ふぁ……ごめんね、僕はもう少し寝るよ、うん、ありがとう、騒禍ちゃんもね……。ばいばい」


「ふう」


「さてと、……もう一眠りしよっと……」
「オーナー」
「……………」


誘誘(いざない・いざな)は、本当に切なそうに目を伏せた。そして小さく溜息をついて、声のした方に目を遣る。


「……君か。キューテンキュー」


キューテンキューと呼ばれた人間は、誘誘のいる部屋のドアのあたりに立っていた。


「相変わらず、ったなーい部屋ですね」
「仕方ないじゃないか。ここ最近忙しくってさ、家に帰れなくて、この部屋で暮らしてるようなもんなんだし」
「それにしてもこれは無いでしょうよ。貴方アホですか?」
「失礼な秘書だ」


誘誘は肩を竦めた。

誘誘。
ワックスで一部の前髪をかき上げて、灰色のハイブランドのスーツを着ている。中性的な小憎らしいほどの美顔の持ち主で、柔らかい雰囲気を纏う二十代前半程の青年だ。
いろんなものがあちこちに散乱した部屋の、紫色のソファーの上で脚を伸ばして横たわっている。上半身を起こしてはいるものの、目はまだ眠そうに蕩けていた。


「それで、こんな時間になんなんだい?」
「また一人、逃げ出しました」
「え、また? 懲りないなあ。ちゃんと捕まえられたの?」
「はい、まあ。パトロンもそんなにいない奴だったんで、とりあえず殺しときましたよ」
「そうかい……彼の持ち物は、また競りにでもかけておいて」
「わかってますって」


キューテンキューは呆れたように頭を掻いた。


×/

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -