「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「………って」
「手?」
「はぐむなひてっ!」
「……はあ?」
《ギルド》の飯炊き姉さんこと四面楚歌(しめん・そか)は、過剰に異常な赤面症だった。
赤面症。
あがり症。
加えてどもり症。
「あららー……」
「楚歌さんまたかー」
「違うの。あのねー、さっきのは“はじめまして”って言ったんだと思うよ」
「えっ? ……あ、ああ、“はじめまして”か。掠ってもねーな」
「萵苣、あまりそんなことを言うものではないわ」
「にょろひふも願いひまつ!」
「……こちらこそ、にょろひふ」
萵苣が四面楚歌の言葉を反復するように挨拶をすると、彼女はまたもや、かあああっ、と顔を赤くさせた。
四面楚歌。
女性。
《ギルド》の炊事の一切を仕切っている。
クッキーのように茶色いふわふわした髪を一つにまとめ、白い三角巾をつけている。全体的に愛嬌のある雰囲気の、同い年くらいの人間だった。
「おっはーww 三人共ww よく眠れた?ww」
「おはよう琢磨、今日も素敵な朝と笑顔ね」
「硝子には負けるけどなww」
「ふふふっ、ありがとう、本当のことを」
「相変わらずおもろ硝子、クソ噴いたwwww」
ゴスパンクな服を着た切磋琢磨が肩を揺らして脇を通り過ぎる。
俺達はファナに案内された席に座った。他目的の部屋に、ボロい机を四方八方に連ねて、全員で顔を向け合えるようにしている。ちゃんと全員が席についたのを確認したあと、切磋琢磨が前で拡声器を持って「あー、マイクテスマイクテス」と喋り始めた。
「一体なんなの?」
「あー、コレはなー、魚くん。朝の挨拶や」
「挨拶?」
俺の横に座る瞬刹那が言う。
「毎朝毎朝、ボスがああやって挨拶してくれんねん」
「へえ。……そういえば、なんで皆あいつのこと“ボス”とか“琢磨さん”って呼んでんの? 年上にまで敬われてるし」
「俺達がこうやって生活できるのは、ボスのおかげやからな」
「ふぅん」
心から慕っているような笑顔。藁半紙をぐしゃぐしゃにしたような笑顔を浮かべて、瞬刹那はそう言った。
「あーあー……。……ちょ、これ壊れてるマジキチwwww 声全然出てないだろ」
「ボスー、いっそ無しでやっちゃいなよ」
「はあ? ふざけてんのか?ww イジメだろwwww」
「琢磨さん、早く食べたいんでさっさとやっちゃって下さーい」
「お腹ペコペコやわー」
「お、ねがい、します」
「いっけー! ボスちょーいけめぇえんッ! 刹那おじちゃんと違ってねー!」
「だから苛、それどういう意味やねん!?」
ガヤガヤと賑わう朝の宴。
煽られた切磋琢磨は「ぶっは! ちょーウケる\^q^/」と言いながら拡声器を放り投げる。傍にいた四面楚歌が、あたふたとそれを受け止めた。
そして、切磋琢磨は口を開く。
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