俺尾レオ。
俺折尾レオ(おれおれお・―)というペンネームで長期連載を持つBL漫画家。
黒髪黒目。
女の中では割かし長身。
冷静そうな眼差しをしているそこそこ美人。

美人…………美人、なんだが。


「魚さん萵苣さん、悪いがそこで絡んでくれないかな。体位は正常位で構わないから」


発言が美貌とマッチしない。

俺と魚はとんでも無いようなものを見る目で俺尾レオを見た。すると彼女はニコリと笑って「手錠の描写はあと七コマだから」と俺達に言った。別にそういう催促じゃねえよ。

彼女に言われるがまま、持ち合わせの現金を両替商で換金して貰ったら、タイヤを買えば宿には泊まれないであろう金額ほどにしか到達しなかった。
そこで俺尾レオは、「俺の家に泊まらないか? 一室くらいなら貸せるよ。なに、代わりに漫画の構図のアシスタントをして欲しいんだ。悪い話じゃないだろう?」と朝飯前な破格な待遇を条件に交渉賛成を提示した。
全然朝飯前じゃなかった。

とにかくタイヤをレタス号三世に取り付けるのは明日に回し、そのまま彼女の家にお邪魔させて貰った。
早速の仕事として引き受けたのは絡みの体勢だった。恥ずかしいとかってレベルを軽く超過してんだが。


「はあ? ふざけないでくれる? そんなこと出来るわけないでしょ?」
「あっ、いいなその眼差し、その冷徹ながらに愛好を隠した艶やかな瞳で萵苣さんを睨みつけてくれたまえその構図に俺ははなりほえへはうぐぶぶ」「ちょ、涎だらだら垂らさないでよ気持ち悪い」


怒気の孕んだ震える声で言う魚。
俺は溜息をついた。

硝子は、と言うと、アシスタントの人と一緒にトーンとやらを買いに行った。くそ、難を逃れやがってなんて幸運なヤツなんだ。


「ふむ……折角男二人揃ったんだからリアルな体位を描いてみたかったんだが…………、まあ、諦めようか」


ふむ。と椅子に座り直す。
すらりと伸びた脚を組み、手を口元に当てて考えるように目を細めた。
黙ってれば普通の美人なのに。


「じゃあ、原稿の作業をお願いしようかな」
「原稿…………って、俺絵とか描いたことないぜ?」
「大丈夫。ベタ塗りだとかトーン削りだとか簡単な作業だよ」


髪を静かに払って机上の二枚を俺達に渡す。


「ここ、ちんこにグラデ貼って。あと汁は削って」


なんかスゴいこと言った!


「汁はエロくしてね」


何微笑しながら付け加えてんだよこの女!


「せんせー、尻の汁がエロく削れませーん」
「ああ、そこはトーンカッターを斜めに削って…………」


アシスタントの一人であるにゃる子さん(ニックネーム)の席まで言って、多分的確であろう指示を出す俺尾レオ。
なんというか。
外見と発言のギャップが激しい。


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