焼べた火は煙となって囀るような青空に霞んで溶けた。麗らかな朝の日差しが二重になって俺達に熱を押し付けてくる。じわりと滲む汗を拭って、飛沫する灰を見つめた。

ディスパラノイア街に来て四日目となる今日の朝。
俺達は《ギルド》メンバーの火葬作業を行っていた。百人といる死体を一カ所に集めるのを不可能とした俺達は、結局、青いビルディングの建物ごと焼き払ってしまうことにした。
青い廃墟が、赤に呑まれる。
それはなんとも言えず綺麗で、だからこそ、妙に背徳的に思えてしまった。

さよなら《ギルド》、もう会うことはないだろう。
もし俺達がそっちに行ったときにでも、また持て成してほしい。
逃げる俺達には、随分と先になりそうだけれど。

蒼空の果ての宇宙の向こう、更に広がる銀河の粒の友人たちに、俺は静かに百合の花を投げた。


「もういいだろ」


萵苣は目の前でけたたましく燃え上がるビルディングを見つめて踵を返す。
その先にはホライズンブルーの退廃的なレタス号三世が、準備万端の姿で待ち構えていた。


俺は、逃げる。
また三人で。

たしかに*+αの件は解決してしまったけれど、戦争谷騒禍は俺に言った。

逃がさない、と。

だったら。
俺は、逃げるしかないわけだ。


「ところでよー、魚」
「なんだよ、萵苣」
「お前の後ろにくっついてる…………“それ”、何?」


萵苣は俺の後ろでにやにやと笑っている人物を指差した。


「Hey,緑の髪のおにーさん、そんな訝しげな態度をとらないでくれよ。俺はそんな目でジロジロ見つめられるほどマゾじゃないさ」
「悪いな、ガン見しちゃうわ。目が離せねぇわ。なんでお前が魚とくっ付いてるんだよ啄木鳥さんとやら」


啄木鳥。
*+αの次期永世トップ。
元、次期永世トップ。


「魚先輩に触発されて俺も逃げることにしたからね。どうせなら、仲間にいれてよ」
「断固拒否だ」
「つれないね。そう言わないでくれるかい?」
「ていうか無理だよ、もうレタス号三世に人の乗るスペースはないんだ」
「車変えたら?」
「アイツを置いて逃げられるかバカヤロー!」


やれやれと肩を竦める鳥は、俺に向き直った。


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