信者やだ | ナノ

プロローグ

 ただ一つ、生まれ変わっても変わらないことを君に教えよう。
 なにかを信じるということは、とてもあやふやなものだ。
 気づかないうちに形を変えたり、いつしか思い出せなくなったり、恐ろしいことに、消えてなくなってしまったりもする。その原因にしたところで、完全には正体を掴めずにいるはずだ。けれど、それは確実に己の信念を挫き、捻じ曲げ、失わせていくのだ。正義を貫く心。幸せを夢見る心。誰かを幸せにしたいという心。そんな様々な思いも、いつかは消える。どれだけ強く願おうとも、夢や希望と一緒で、あっけなく折られてしまうのだ。本当は、その金ぴかを、後生大事に持ち続けていたかったはずなのに。
 かくかくしかじか、常世のことわりは残酷だけど、それに悲観はしないでほしい。
 たとえこの世を地獄に感じたとしても、もうなにを信じられなくなっても、それが一巻の終わりというわけではないのだから。
 人の生きかたは八百万やおよろず
 意志目的は無限の転生をいくつも重ね。
 死んだ途端に息を吹き返す。
 忘れてくれるな。今生の君が持つ信念を大事することを。失くさないように抱きしめておくことを。その気持ちがいつか砕けようと、その日までは大事に持っておくことを。もし砕けても、もう一度形作られる日を待っていることを。そうやって、いまを生きていくことを。
 やりたいことをやれることが、信じたいことを信じられることが、どれだけ尊く素晴らしいのか、どうか君だけは知っていてほしい。
 僕は君を見るたびに、信じる心を思い出す。




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