「そうだ、どうせなら自己紹介をしていこうか。その様子だと、並木くん遊馬瀬くんとは、もう済ませているようだし……残りの受講者を紹介するとしようか。エイリアンくん、否見くん、こっちに来て」


教卓の真ん前に座っていた二人の人間を手招きした。その二人はガタンと席から立ち上がり、教卓の隣へと立つ。
俺達はやっと、大講義室に入る。朽崎は緊張したように、マスクから覗いた頬を赤らめさせていた。まるでトマトみたいだ。もしくは茹でたタコ。


「はは、じゃ、お互いに自己紹介を」
「はい……えっと、はじめまして。皆さんと一緒に学ばせていただきます、朽崎無言です。どうかよろしくお願いします」


礼儀正しく、朽崎はお辞儀をした。その態度に軽く苦笑して、一人が口を開ける。


「どーもはじめまして。俺は秋=桜=*=エイリアン(しゅう・おう・あすたりすく・―)っての。皆は秋って呼んでるから、朽崎ちゃんもそう呼んじゃってよ」


秋=桜=*=エイリアン。
もう何処から来たのかも何処で生まれたのかもむしろ何処へと向かっているのかもわからない、謎だらけの男である。
もう、胡散臭さがプンプンと鼻腔をついてくる名前からして、言い迷うほどに謎な奴だった。
赤茶けたススキ色の髪に、眼鏡越しに見える不思議な色をした瞳――ほのかに桜色ばんだ、宇宙の色――それは今までに見たことのないような、人間らしからぬ虹彩。身長はかなり高いほうで、対面するとき俺はいつも秋を見上げる姿勢になってしまう。首が痛い。


「あ、はい……よろしくお願いしますね」


秋の挨拶に、どこか浮ついた返答をする朽崎。礼儀というものがなってないようにも見えるが、今は朽崎に肩を貸すしかできない。当たり前田のクラッカー! それもその筈。何故ならば。


「否見透(いなみ・とおる)、よろしく」


包帯で、ぐるぐる巻き。
男にしては華奢の部類に入るだろう、小柄な否見の体の、肌色という肌色は、あらんかぎりの包帯で埋め尽くされていた。更にパーカーのフードを深く被っていて、目元がよく見えない。季節外れにマフラーまでしており、口がすっぽりと覆われたたままだ。おまけのおまけ、奴は手袋まで付けているときてる。
まあ、なんてというか、「外気に晒されたら死ぬの?」レベルの鉄壁を誇っている。絶句もんだ。なんも言えねえ。それはそうと、言えてるじゃん、っていう。

こんな怪しげな男が秋の隣にいるのだからそちらに注意を向けてしまうのも致し方ない。
なんだこいつ。
自己顕示欲が高いのか?


*prevnext#



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -