遊馬の肌が電灯により照らされる。相変わらず雪のように白かった。
こう聞くと、まるで遊馬が白皙の美少年に聞こえるかもしれないが、奴はそれとは明らかに真逆の立場に位置している。遊馬は血の気が無いくらいに青白く、健やかなイメージは皆無だ。もし電灯も何もなく、照らすものが月明かりだけだとしたら、俺は間違いなく、遊馬を人外だと勘違っただろう。それほどまでにこの男は白いのだ。もしその顔面に石灰粉末を投げつけたところで、肌の色は投げつけた前となんら変わらないだろう。運悪く目に入ってしまい失明するだけ。実につまらない。


「僕と別れたあと、君は一体どういう経緯があって、あの道端に倒れていたのか。僕は果てしなく興味があるよ」
「本質を突くのはよせ。お前には理解出来ないような高貴な理由があるんだ」
「どうせ酔っ払ってぶっ倒れたんだろう? 素直じゃないね、君は」
「違うと言ってるだろうが」


ズルズルッズルズルルルズルズルズズル。

いい加減、後頭部が摩擦熱でハゲそうだった。地肌は濃厚な接吻をアスファルトにかましている。
ひゅーひゅーお熱いねえご両人!
誰が上手いこと言えと。


「遊馬。お前に重大かつ大切な任務を託宣してやる。今の時刻を俺に教えろ」
「君の今の角度からなら星が見えるんじゃないかい? 昔漁師は星の位置で今の時刻を把握していたようじゃないか。猟師に出来て君に出来ないわけがないよ、深夜」
「ああ、尤もな意見だ遊馬。ただし五つだけお前に言いたいことがある。一つ、この角度もといこの体勢はお前に無理強いされている。二つ、星は殆ど見えない。三つ、俺は猟師じゃない。四つ、お腹が空いた。ああ、言いたいことは四つだったな。そう四つだ」
「今までの話と全く関係のないものが見受けられたけれど、まあ言いたいことは伝わったよ。つまりは、僕に時刻を教えてほしいわけだね?」
「だから最初からそう言ってるぞ、馬鹿なのか?」
「午後十一時五十六分だよ」


遊馬は時計も見ずに淡々と答えた。真偽は確かではないがこうも平然と答えられては本当な気しかしない。なかなかの手練だな遊馬。何の手練かはよくわからないが、多分カップラーメンを作るのは上手い筈だ。オリンピック種目になるなら金メダルは確実だぞ。


「そうか、もうそんな時間か」


俺はまだズルズルと引きずられている。背中はアスファルトが冷たくて、でも頭は熱を帯びる。妙に奇妙な感覚が身体を覆っていた。天ぷらなんかの衣がびっちりと張り付いてるみたいだ。
遊馬は小さく「うん、そう」と頷く。

そして。


「――――つまりは遅刻寸前だよ、深夜」


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