暑い。
とにかく最近暑い。
部屋の中でクーラーをフル稼働させても夏はもう夏ってだけで暑い。
気分もだんだんとダルくなって夏休みなんか部屋にこもってぐだぐだするのが毎年の恒例行事。
しかし高校生の夏休みには「登校日」というのがある。
それは俺の毎年の恒例
クーラーフル稼働で部屋の中でぐだぐだする。
を不可能にさせる出来事なわけで…。
「あー登校日ダるー」
カレンダーを見れば俺が最も恐れる登校日が明日に迫っていた。
大したこともしないんだからサボってしまおうかとも思ったが、俺の親友で恋人の櫂はきっと登校日にも律儀に学校へ来るだろう。
夏休み中外に出ないせいで櫂とも会えてない。
櫂も暑いのは苦手だからきっと俺と同じような生活を送っているのだろうと家に呼ぶこともなかったし、呼ばれることもなかった。
要するに
櫂不足…なわけで。
櫂に会うためにも嫌だと思いながらも明日の登校日は絶対に行かなくちゃならない。
俺の我慢も限界に限りなく近い
「………」
思えば思うほど櫂不足なのを実感するぐらい恋しくなってくる。
我慢出来なくなって俺は携帯を取り出して通話ボタンを押す
プルルル…
プルルル……
『何か用か』
意外と早く櫂の声が携帯から聞こえた。
まずそれが嬉しくてニヤニヤしてしまう。電話だから櫂には見えないし、いつもみたいに怒られない。
「いやー最近全然会ってないからさぁ…恋しくなって」
『……明日登校日だろ』
呆れたように櫂がそう言った。確かに明日会えるけど……櫂に会えなくて、明日会えると思っても、何か寂しくて。
声だけでも聞いて会えなかった分を埋めたいと思ったのは俺だけか?
寂しかったのは俺だけ?
辛かったのは俺だけ?
「櫂」
そんな思いを込めて櫂の名前を呼んだ。
もし目の前に櫂がいたらきっと少し困った顔をしたんだろうな…いや、もしかしたら電話の向こうでそんな顔をしてるかもしれない。
「…か―」
『……も。』
「ん?」
もう一度名前を呼ぼうとしたら櫂の言葉に遮られた。
けどよく聞こえなかったから聞き返す。
『…俺、も。……少しは寂しかった、かもな。』
きっと俺の可愛い恋人は電話の向こうで真っ赤になってることだろう。
本当に素直じゃないけど俺はその素直じゃないとこも大好きなんだ。
「へへーそっかそっか!」
『…っ』
照れてる照れてる。
俺だけじゃないんだな。やっぱり櫂もちゃーんと俺のことを想ってくれてるんだ。
そう思ったら何か急に嬉しくなって俺は櫂に提案する。
「なあ櫂。明日の登校日さ」
サボってどっか行こうぜ
その後小さく笑い声がした。