限りなくZEROに近い距離で | ナノ





ふわり、と風が舞った。

その時の距離、

わずか数センチ。

もっと、

もっと近くに

「櫂、」

言葉の続きなんて言わなくてもわかる。

もっと近くに

そう言いたいんだ。
コイツはワガママだから。俺を独占したいから。

「…レン」

もっと、

もっと近く。

まだ?

まだ近く?

「櫂、おいで」

コイツの目が

手が、

唇が、

声が、

存在が、

俺を限りなく欲している。
その独占欲が、愛情が嬉しい。

もっと愛してほしいと

もっと欲してほしいと

もっと、

今以上を求める俺を

コイツはただ愛して、欲して

「櫂、愛してるよ」

その言葉と笑みが

俺を

「……レン」

名前を呼べば満足そうに笑って
コイツはワガママだから。俺が宥めてやらなきゃいけないから。

だから、

「櫂、おいで。もっと、もっと私の傍に」

だから、

俺はコイツの

傍にいなくちゃ。

「櫂」

ふわり、風が舞う。

その時の距離、

ゼロ