二本の影が夕日に伸ばされてアスファルトの上に広がっている。そのうちの一本がもうひとつをひょいと追い越した。ずっと影を見つめて俯いていた俺が顔を上げると、怖いほど真面目に円堂は言った。 「好きだ、鬼道」 あまりにも無感情に言うので思わず泣きそうになった。 「まだ、ダメか」 そんな言葉、聞きたくない。首を振れば、何か言いたそうに円堂は口を開く。 「円堂、頼むから」 「鬼道」 円堂は言葉を遮り俺を抱き寄せた。あぁ嫌になるほど暖かい。あの人とまるで正反対だ。正反対なのに心地好い。ではあの人はどうだっただろう。あの人は、あの人に抱きしめられた時、俺は心地好いと感じただろうか。 「ゴメン鬼道。でも俺鬼道が好き。大切にしたい、から待ってる。ゆっくり待ってる」 それでいいか、と首を傾げて笑みを浮かべるお前に申し訳なさを感じたと同時に安堵した俺を許してくれ。 お前には笑ってて欲しい 101105 title:エッベルツ |