黒い床はひやりと冷たく、人肌には程遠い。膝をつく。指先、そして手の平、腕、腹、頬。接する所からじわりじわりと冷えていく。床と体温が同化していく。このまま溶けて冷たさの中に消えて無くなってしまえたなら、やはり俺はあの人のもとへいくことを望むのだろう。ただ、いくことを許されさえすれば。心中で問う。届かぬ思いとは承知の上だ。離れた俺を貴方はもう一度愛してくれるでしょうか、と。
「総帥っ…」
無論応えなどない。決して美しくもない泣き声だけが、広い空間にこだましていた。身体をずらすと俺は床を暖めていた事に今更ながら気づいた。





体温が、あるんだ。
110306