時計の短針が3の文字を過ぎ、窓の外は漆黒の空が閑静な眠る街を覆っていた。 「なぁ鬼道」 守は寝返りをうった恋人に話しかける。もそりと布の擦れる音がしたが返事はない。だが少年は構わず独白のようにぽつりぽつりと続ける。 「俺、大好き、だ。鬼道。愛してる」 少し間をおいて、小さな声で返事があった。 「俺もだ、円堂」 有人は再び寝返りをうち、互いに布団の中で向き合う状態になる。だがな、と有人は続けた。 「俺はお前の大好きが、何よりも、一番怖い」 困った様に笑う有人を見て、守はやっぱし鬼道には敵わないやと悲しそうに笑った。 「お前が大好きと言った時から何度お前に傷付けられた事か」 「鬼道、」 「お前は優しい。だが自分でその優しさを行使して、人を傷付けないようにいたぶるのはいい加減やめろ」 有人は再び寝返りうち、守に背を向けた。 「俺はお前を愛してるままでいたい」 有人に腕を回し、守は参ったなぁと小さく呟いた。背中から温もりが伝わるのを感じて続けた。 「円堂、俺にはお前の、」 有人は眠気で滑舌のはっきりしない言葉を残して瞼を閉じた。それを聞いて守は一人、肩を揺らして力無く笑った。 「ほんっと、お前は何でもお見通しなんだな」 守はいっそう強く有人を抱きしめた。 俺にはお前の「大好き」が「許して」にしか聞こえないんだ。 100928 |