決して貴方を恨んではいない。忠義と畏敬の念はいつも俺の胸中に在った。圧倒的センス、完璧な統率、鋭い悟性。生得や後天的なものも含めて挙げれば切りがない。瞬時に俺を虜にした貴方の持つ魅力は何処へ行こうとも恒常、いやそれらは常に進化し続けていた。そして底無し沼のように貴方は俺を捕らえ続けていた。それは無論今も不変だ。 よって反旗を翻すなど有り得ない。そう、これは裏切りでも反逆でもない。 「鬼道さん、俺の好きな色が何で赤色か知ってます?」 「鬼道さん、俺のペンギンが何で赤色か知ってます?」 「知ってますか鬼道さん知ってますか、鬼道さん」 「知ってますか、」 翻して俺の前を行く貴方のマントが、 俺を捉える鋭く、でも途轍も無く美しい貴方の眼が、 赤色だからですよ。 右足を振り上げると貴方は顔をしかめて叫ぶ。ダメだ、と。止めろ、と。でもこれは貴方が為の俺の技。そしてこの行為は去った貴方への 「皇、帝っ…!」 ただ一途な愛なのです。 愛が為に俺の骨は再び音を立てて軋んだ。 title:彼女 110123 |