律動する度、深夜の闇の中に快感が積み重なっていく。冬の冷えた部屋の中にも関わらず、その領域だけはおそらく湿度が高かった。べたべたする両手を愛おしい背中にまわし、ぐいと引き寄せる。唇が重なり、刹那遅れて胸、腹、腰。接続箇所は一層深く触れ合った。不動が動く度に、俺は惜しみなく嬌声を響かせた。せめて不快でないように、出来るだけ鼻にかけて、喉を鳴らす。愛してる愛してる。快感だけを因子に持つこの非生産的な行為を紡ぐ夜は、いつもどちらかが泣いた事実に乗っかっていた。
「、ぁう……んっ…」
「キツイか、鬼道ちゃん」
「…そう思うなら、…少しは優しくしろ…」
「それじゃ鬼道ちゃんが満足しないでしょ」
律動は会話を挟むにつれて不規則へ変化し始めた。行為の最中は余計な事が頭を巡る。単なる屁理屈といえど、いつもどこか気にしていることではあった。
「ぁ、ん…ふどぉ…」
「なぁに…きど、ちゃん」
「お前は、これからも…」
不動はベッドと俺の背中の間に腕を入れ、抱きしめた。
「そばにいる」
「…っ」
「だから、安心して」
いっていいよ。
意識が飛ぶ寸前、頬を生暖かいものが伝った。それはあいつが俺の中に出した無意味と化す命の塊よりもきっとあたたかいものだろう。





title:にやり
101229