爪が伸びていた。少し白い幅が広かった。だからそれを如何に有効活用しようかを思考した結果、奴の背中にささやかなる溝を作ることにした。いや、ほんの些細な跡でいい。奴が最中に俺を背中ごと抱き抱えるのを真似る様に、俺も奴の腕の下から背中へと腕を回して己の手の感触を確かめる。互いの体温を正面で感じつつ、ゆっくりと爪を立てる。奴は行為に夢中で気づかない。きっと気付いても快感故だと思うだろう。ゆっくり、ゆっくりと交差し爪を背中に立てた両手をばってんの様に降ろしてゆく。スッ、と鳴るか鳴らないか程の音をたてて、背中に当たるシーツの柔らかさと同じ感触を引いた肘に感じた。きっとこちら側から見えない奴の背中には紅の筋が出来たであろう。愛おしくてそのばってんをなぞるように、俺への愛撫を終えた豪炎寺を引き寄せて抱きしめた。




情事中の鬼道さんの悪戯。
100927