我等が総帥は、なにせ『総帥』でいらっしゃる。それ故さぞかし多忙な日々を過ごしてらっしゃるに違いない。
部活が終わり、空が橙から紺に染まりつつある放課後、俺は総帥に明日の試合についての話をと思い、総帥の部屋へ向かった。電子扉を開けると有り得ない光景が目に入ってきた。
総帥が床に突っ伏していたのだ。
「総帥!」
走り寄って抱き起こすと、総帥は深く深呼吸なさった。
「すまない鬼道、少し疲れていた様だ」
総帥はすぐに立ち上がられた。どうやらご無事の様だ。ほっと息を吐(つ)いた。すると総帥は言われた。
「鬼道、私は疲れている」
珍しい、いや有り得ないような言葉に驚いた。
「総帥、明日の試合の打ち合わせをと思いましたが明日にします。今日はゆっくりご自愛なさって下さい。失礼しました」
立ち去ろうと踵を返すと、マントを捕まれた。
「そ、総帥!?」
「鬼道よ、私は疲れていると言ったのだ」
「総帥、ですから今日は…」
駄目だ。たまに自分の頭が憎くなる。推測してしまう。あぁ、俺はなんて可愛くない子供だ。
「そんな顔をするものではない。物分かりの良い子供は好きだぞ、鬼道」
きっと今日は手を酷使するだろう。でも総帥はお優しいから、俺に配慮してくださるだろう。
大きな総帥の手が、ほてった頬を冷やしてくれる。
「総帥のお体は冷たいですね」
「案ずるな。お前が暖めればよい話だ」
「無論そのつもりです。家で義父様にも練習に付き合っていただきました」
「ほう、仲良くやっているようだな」
「全ては総帥の為に。今宵はご奉仕させていただきます」
「期待しているぞ、鬼道」
総帥はそう言って俺の手を引き、奥の部屋へと導いた。





どうです総帥、俺の肩揉みテクは!
101214