▼あのこ(髪/唇/声)
2015/03/17 22:37
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※ストーカーじみている。
隣の席に座るあのこはとても魅力的な人だ。
染めたこともないであろう腰まで伸ばされた髪が風に翻るたびに見惚れてしまう。あの髪に触れることができたらどんなにいいんだろうか。梳いてみたら、きっとおだやかな川のように容易く流れてしまうんだろう。そしたらあのこを包む甘やかな香りがふんわりと漂い、僕を失心させてしまうに違いない
嗚呼、触れてみたい。梳いてみたい。
あのこは少しクールだけれど人気者で友達も多い。その友達と楽しげに笑みを作る唇は薄く、そしてほんのり桃色に色づいている。最近は愛らしさだけじゃない魅力まで醸し出して僕を惹きつけて止まないから困ったものだ。
あの唇を食むことができればどんなにいいんだろうか。口付けてみれば、きっと瑞々しい果実のように柔らかく、そして甘いのだろう
そしたら僕はまるで吸盤のように吸い付いて貪ってしまうに違いない
嗚呼、食んでみたい。吸い付いてみたい。
今日は朝から音楽の授業。僕は結構音楽が好きだ。特別得意というわけじゃあないが、合唱するときに立ち上がればすぐ側ににあのこがいる。それだけでもぶっ倒れてしまいそうなのに、長い髪が偶に僕に当たったり、桃色に染まる唇が開いて歌を紡ぐとき、頭の中に響いて巡る。
鈴のように凛とした声色で僕の名前を呼んでくれたらどんなにいいんだろう。好きだと告げられでもしたら僕はどうなってしまうだろう
集中なんて、できやしない
嗚呼、その声で僕の名を紡いで貰いたい。それだけでいいのにこの気持ちは適わない
そしてまた思うだけを繰り返すのだ