「あー、あー、もしもーし、聞こえますか」



遠い人に受話器から声をかけた。
返事はない。

もしもし、応答願います。



今どこにいるのか
女の子と喧嘩が大好き、そんなあなたは。
愛しのろっちー、私の携帯は壊れた。





(もしもし、なまえ。何で出ないの、お前の声が聞きたい)

届くことは無いだろう。
きっとなまえの心はもう離れた。
俺の携帯の充電が切れる。
愛しいなまえ、俺はまだ君を愛してる。




聞こえる雑音はざわざわと耳を擽る。
こんな音が聴きたいんじゃないのに。あなたの声、言葉だけに鼓膜を震わせたい。


出て行った。
どこかに行ってしまった。
何も言わずに。それまでだったの?そこで終わってたの?
あの日、喧嘩をしなければどこにも行かなかったのか、行くならちゃんと言ってくれたのか。
こんなことを考えても仕方ないのに。


「もしもし、もしもし。聞こえますか、ろっちー」


もしもし、

もしもし…


もしもし……


家の電気は止められた。もう電話ができないよ。
もしもしろっちー。一人は寒いね。心が寒いね。





(もしもし、なまえ。やっと帰れる。君に会いに。)

伝言は聞いてくれたのか、
早く会いたい。もう一度だけでいいから。

携帯は充電したから、いつでも電話をして欲しい





「もしもし。やっぱりこの距離では届かないのかな」


もう諦めよう、立ち上がって、受話器を置いてここから立ち去る。そんなの簡単。

できる訳ないのにね。

耳に当てすぎて跡もつくよ、
ろっちーの声が聞きたいの。


「もしもしろっちー。これがきっと最後ね。受話器をとって、お願い。

もしもし、


もしもし…もしも…」


「もしもし。こちら六条千景。ただいまなまえ」


電話線を目で辿り、受話器の先を見ると、傷だらけのろっちー。


「ろっちー…ろっち…ーっ」

「ごめんな、なまえも、寂しかったんだな、よかった。待っててくれて」


私から寄ろうとしたのに、彼が先に近づいて、私を抱きしめた。


「よかった、帰ってきて…」



糸電話

「帰ってくるよ、何度だって」
「うん、…どこ行ってたの?」
「東京。でも今度からはちゃんとさ、電話して欲しいかも」
「携帯壊れた」
「え」
「電気代滞納したから家電も使えないし」
「じゃあまず金払わないとな」
「うん…」

ろっちーを見たら、いつもの無邪気な笑顔を向けて、手を、握った。


2012.06.07
久しぶりに書いた文章なので、もうボロッボロですが、なんとか書き直しました。
以前上げたリクエストの作品の方がよかったかもしれませんが…やはり思い出せず。
お待たせしてしまってすみませんでした、そしてありがとうございます。



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