with a finger


涙が風に当たり、冷えきった頬を温めるかのように添えられた大きくてがっしりとした掌に酷く安心する。
さっきまでその掌の持ち主に喚き散らしていたと言うのに、何て自己中な考え方だろうか。
それすらも気にするのを辞めてただただ、頬を滑る指先を全身で感じた。

乾いた涙を何度なぞっても、消えることはないのに。

ふと、目が合った。
キスをする。
薄くはあるが柔らかい唇が私のそれに触れた。
触れるだけのキスを2、3度繰り返した後に、京平がそっと私を抱き寄せた。



安心感。



ただ、そんな感情を胸に収めてまた涙が溢れ出す。


 危ないことはしないで


そんなことを学生時代、何度彼に言ったことだろう。
彼も、控えてはくれていた。
それでも関わってる人間が危ない人ばかりで、本当は縁を切って欲しいけど、京平の大事な人だから仕方がない。そう思って何度もその意識を振り払った。
今ではもう慣れた。


はずだった。



「普通の生活を、してくれればそれだけでよかったのに」
「、悪い」
「仕方がないよ。我慢、できる」


京平は黙る。
私が笑えば、彼も笑ってくれるのだろうか、なら。

 笑わなきゃ
 笑わなきゃ笑わなきゃ笑わなきゃ笑わ、笑、わ、ら…

そんなの、無理だ。


再び溢れ出しそうな涙を堪えようと瞬きをせずに上を向いて下唇を噛む。
京平の肩越しに天井が見えた。視界の端には私の感情とは裏腹に窓から腹立たしいくらいの快晴が見えた。


「ごめんな、」
「、うん」
「これでも、気をつけてるつもりだったけどな」
「そう、なの…」
「ああ。悪い」


謝らないでなんて言えない。
でも謝られたって仕方がないのに。
堪えきれなくて零れた涙が、少し時間を開けて京平の肩に落ちた。

ぴくり、彼の指先が反応した。

気づかないで、なんて思ったって仕方がないのに。


少しだけ身体を離されて、どうしようもない寂しさが冷気となって襲ってきた。
ああ、悲しい。


「泣くな」
「むり」
「知ってる」
「ばか」



with a finger


細長くもしっかりとした指先のせいで、私の涙は頬を伝うことを許されず、代わりに彼の指先を流れた。




title by.Que sera sera


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