情報屋さんの企み 1
最悪だ。
「いざやさんいざやさん!!これなんてどうですか、私、膝小僧は好きですよ!」
たまには俺も名前と交流してみようか思って池袋に来てみればこれだ。
いや、まあ正確にはアレなんだけど。
ほら、その、ね。
俺、名前がここに来て最後の交流が3日前なんだよね。
そんなに時間経ってないけど、何だか忘れられてる気がしてならない。情報提供したの俺なのに、その恩も仇でしか返って来てない気もするし。
そして問題は今だ。
自分の趣味でハーフパンツを差し出してくるなんて。別にいいけどさ。
「俺、丈が長い方が好きなんだよね、」
「足に自信がないんですか?大丈夫です、中々いい足ですよ。あ、それとも実はズボン脱いだ下は毛がボーボーってやつですか?!そうか、なら別のを…うーん…」
「違うよ。色んな意味で。だからそんな真剣に悩まないでよね」
何だこの子。
もう、知れば知るほど分からなくなる。
本当に何なんだ。
て言うか足フェチなのかねえ。
「まあいいか!今度は夏用コート見に行きましょう!」
凄く楽しそうな表情でスキップをしながら上着系のコーナーへ向っている。
「シズちゃん、本当にこの子といて疲れない?」
「疲れねえつってんだろ」
「名前って考えれば考えるほど分からなくなるんだけど」
「考えるな、感じろ」
「…何それ」
シズちゃんに聞いてもよく分からない。
まあ、単細胞なシズちゃんが色々考えるわけないか。
あながち間違ってもいないだろう。
でも、感じろ、ねえ…
「いざやさん、これなんてどうですか?!」
そう言って勢いよく俺の視界に入ってきたのは黒っぽい半袖のフード付きパーカーだった。
へえ、中々いいじゃない。
「いざやさん、気がつけば大体黒いですもんね。初めて会った時も2度目に会った時も今日も黒いですもん。黒が好きなんでしょう」
「まあ、そうだけど。とりあえずそれは気に入ったから5着くらい取ってくれる?」
「5着?!全部同じのですか?!」
「着まわすからね。サイズはMだよ。シズちゃんみたいに巨大じゃないから、俺。華奢だから」
「自分で華奢って言って恥かしくないですか」
「君本当に失礼だってそろそろ自覚しなよ」
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