ドアを閉めて 1


目の前の男、静雄さんの反応が気になってご飯が美味しくないんだろうと問い質すと何度目かの私の言葉にキレた静雄さんは持っていたお茶碗とハシを「だから美味いっつってんだろぉぉがぁぁ!!!」と叫びながら粉砕した。

ボキッパリーーン!と茶碗とハシが壊れる音がすると我に返ったのか静雄さんはギョッとした表情としまったとでも言いたげな表情が混ざった顔で固まっていた。
対する私は目を見開いて固まっている。

数秒して、



「ああ!ご飯がぁぁ!!!」



フリーズしていた頭が正常に戻り、最初に発した言葉はそれだった。
珍しく上手く炊けたご飯だったのに!



「え、は?飯…?」

「そうですよ!ああ、折角美味しいご飯だったのに…まあまだお代わりがあるからいいけど…って、そんなことはいいんですよ、どうでも!静雄さん怪我はありませんか?!」

「い、や、大丈夫…だけどよ」

「そんなバカな!こんだけ派手に粉砕したのに……あれ?本当だ、丈夫なんですね!!それともサイボーグか何かだったりするんですか?ああ、でも漫画じゃあるまいし…」



彼の手を掴んで怪我がないか確かめると見事に無傷。全く持って無事。
一人ぺらぺら喋りまくっていると静雄さんが呆けたような表情で聞いてきた。



「お前、驚かねえのかよ」



何だそんなことかと静雄さんの手を掴んだまま「いやもうそれはそれは吃驚ですよ!」と自信たっぷりに答えた。



「いや、そうじゃなくて」

「?何ですか」

「こ、怖くは…?」

「ああ!そんなことですか。大丈夫です。私の父もブチ切れた時にお茶碗を粉砕することは多々ありましたからね!まあ流石に片手では無理でしたが。その度に父は母に怒られまして」

「いやでもよ…」

「とりあえず代わりのご飯よそって来ますね!その間に破片を片しておいてください」

「え、あ、おう」



直ぐにキッチンへ向って新しいお茶碗を探すがなかった。
まあ一人暮らしだものな。と思って近くにあった白い器を手に取りそこにご飯をよそった。


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