ご主人様の思惑

縁談を受けた女は財閥の一人娘。

金しか取り柄の無い女に俺が惚れるわけもなく。
しかしそれは向こうも同じ様だ。

ただし女の目当ては金や権力ではなく俺の元に仕える使用人らしいが。



滑稽なことにその女は奴に惚れたらしい。
今もアイツの気を引こうと家出なんてはた迷惑な真似をしてアイツに迎えに越させている。

まぁ、置き手紙を見付ける度に報告に来るアイツを迎えにやっているのは俺だが。


コンコン、ガチャ。

書類に目を通していると扉が開き奴が入って来た。

「お嬢様は自室でお休みになられました」

普段通り業務的な口調で告げられる。

「そうか」

俺も見当はついているから適当に流す。




「で?」

本題は此処からだ。

「ちゃんと時間内に連れ戻したからな。ご褒美の時間だ」

書類を退かしながら問い掛ける。

「先ずは何をして欲しい?」

不敵に笑えば奴は俯き加減で言葉を発した。

「触られた腕の…消毒を」

反対の手で腕を握り締める奴。どうやらそこを掴まれたのだろう。

「来い」
「…はい」

短い会話の後ゆっくり近づいてきたコイツは俺が促すままに俺の膝の上に跨がるようにして座る。

「消毒の後は?」

上着とシャツを脱がせ自分の指の跡が残ってしまっている腕に唇を寄せる。

「…ご主人様で、いっぱいに。満たしてください」

びくりと反応したコイツは案の定いつも通りのおねだりをしてきた。

「イイコ」

既に息の荒いコイツの、襟で隠れていた俺の付けたキスマークをなぞる。

「っ…」
「でも今は名前で呼べよな」

声を詰め顔を赤くするコイツに俺は言った。

「恋人、だろう」

小さくすみませんと呟いたコイツは続けて俺の名前を紡ぐとキスをせがんだ。

俺はその愛しい存在にそっと口付けた。




コイツは俺のモノ。
そして俺もコイツのモノ。

あの女は精々本当に家出したまま帰って来られなくなら無いように、俺等の糧になるんだな。


end

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