詭弁なんか要らないから




※皆に予備学科であることがバレた後
※名前も予備学科




ここに居る皆は、凄い才能の持ち主である。ただし、私と日向くんの二人を除いて。
記憶を消されて思い出せないだけで、こんな役立たずの私にだって何かしらの才能があるんだって変な期待をしていた。でもそれは馬鹿だった。自惚れていた。あるわけ無いって口では言っておきながら心の何処かでさりげなく、ううん、大いに期待していた。それをあっさり「予備学科」という言葉が粉々に砕いた。ああ、やっぱり。って素直に思うことが出来なかった。何だろう、この気持ちは。ごちゃごちゃして、ぐらぐらして、
「名前?起きてるか?」
私のコテージのドアをノックするの音と共に、そんなに声変わりしていない優しい声が聞こえた。日向くんだ。でも、今は会えない。こんな顔じゃ、こんな気持ちじゃ。
「…うん」
掠れた声でドア越しに答えた。話せる状態じゃないから、帰って貰おうと思い声を出そうとするより先に、日向くんの声が聞こえる。
「…俺さ、皆にお前はどんな才能を持ってるんだろうってずっと言われ続けてた」
私はそんなに言われてこなかったけど、日向くんに期待を寄せるのもわからなくもない。議論であんなに活躍しているし…。才能が無い方が不思議なくらいだ。
「だからって訳でも無いけど自分の中で期待をしていたんだ。どんな才能かはわからないけど、きっと俺にもあるんだって」
日向くんは私以上に自分の才能に期待していたみたいだ。ドア越しにでも、声だけで憎しみ、怒り、嫉妬とか沢山の感情がごちゃごちゃになって涙声と混ざって私に届く。
ああ、私だけじゃ無いんだ。
どうしても込み上げてくる気持ちが抑えられず、気付いたらドアを開けていた。そこにはいきなり姿を現した私に驚く日向くんがいた。かなり泣いていたようで、瞼が腫れている。
「…っ、名前!?」
出てこないと思って油断していたみたいで、かなり顔がぐちゃぐちゃで思わず笑ってしまった。それでも日向くんは相変わらず驚いたままの顔だ。きっと泣き顔見られて恥ずかしかったんだろう。でも私はまだ泣き足りないから、少し胸をかしてもらっても大丈夫かな?
今は少し、このままで。




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