小さな貴女に大きな愛を




「今日もいい働きっぷりでちたね!これ、タオルでちゅ!」
まるで何処かの運動部のマネージャーのようにてきぱきと生徒一人一人にタオルを渡しているのはウサミ先生だ。ウサミ先生から渡されたタオルは柔軟剤の香りがして、生徒思いということが伝わってくるようだ。



ここはジャバウォック島。おとといここに来たばかりだが、居心地がとてもよく、すっかりここの生活に馴染んでしまった。急に連れてこられた私達は当然のように驚いたが、ウサミ先生が言うには「適度に働いて、らーぶらーぶするんでちゅよ!」と、いうことだった。意味がわからなくて生徒は私も含め不安になったが、初日から早速働いて、その後は皆と楽しく島を遊び回って、皆で夕食を食べて、自分が自由に使える部屋でゆっくりとする…というとても満足感が得られる生活をして、次の日にはもう皆すっかりこの島の生活を楽しんでいた。ウサミ先生も楽しそうにしている私達をみて、とても嬉しそうにしていた。
今日の仕事は終わった。だから、これから皆が待ちわびていた自由時間が始まる。
「ミナサン今日もお疲れ様でちた!これから自由行動でちゅよ〜!…って、ほわわ!既に誰もいまちぇん!」
ウサミ先生が話を始める前に皆はどこに誰と行くかで盛り上がっていて、全く話を聞いていなかったのだ。それに気付いたウサミ先生は泣きそうな顔をして一人で凄く落ち込んでいる。
「ミナサン仲良さそうで何よりでちゅ……」
ウサミ先生そんなに落ち込まないで、と声を掛けようとしたとき、
「名前ちゃーん!今日は女の子全員で遊ばない?」
少し離れた所から私を呼ぶ真昼ちゃんの声が聞こえた。真昼ちゃんの近くには私を除く女の子が全員いた。真昼ちゃんは今、ウサミ先生の名前は呼ばなかった。まだウサミ先生を完全に信用している訳ではないということなのだろうか。
「あ、真昼ちゃん。でも私…」
ちらりとウサミ先生の様子を伺うと、きのこが生えるんじゃないかと思うくらいに落ち込んでいた。
「いいんでちゅよ、名字サン。先生は慣れっこでちゅから。あちしのことは気にせずミナサンで楽しく遊んでくだちゃい…」
こんなに悲しそうにしているウサミ先生を放っておける訳もなく。
「ごめん真昼ちゃん達、今日は遊べない!また今度遊ぼう!」
「そっかー…、まあ今回は急だったからしょうがないか!今度は遊ぼうね!」
真昼ちゃん達に手を振って別れる。この場には私とウサミ先生が残された。ウサミ先生は私が何故誘いを断ったのか分かっていないみたいで首を傾げている。
「今日はウサミ先生と遊びたいなって思ってたんだけど、遊べる?」
私がそういうとウサミ先生は固まってしまって動かなくなってしまった。
「う、ウサミ先生…?」
不安になった私がウサミ先生の顔を覗き込むと、ウサミ先生の目には涙が浮かんでいた。なんて声をかけたらいいのか分からずに戸惑っていると、
「……!すみまちぇん!!こんなに、グスッ、優しくしてもらったのは久しぶりで、涙が止まりまちぇん!」
「そんな、ウサミ先生…。はい、ティッシュ」
「ありがたいでちゅ…」
渡したティッシュでちーん、と鼻をかみ終わると、本当に幸せ!ということがひしひしと伝わってくるような笑顔で私を見ていた。
「それでは名前ちゃん!どこに行きまちゅか?ネズミがいるところと怖いところ以外ならどこでもいいでちゅよ!…あっ」
足元を見ていなかったウサミ先生は転びそうになったが、寸でのところで私が腕を掴んだ為に転ぶことはなかった。
「ウサミ先生ってばそそっかしいんだから」
「え、えへへ…名前ちゃんありがとうでちゅ」
はしゃぐ子どもを見ている気持ちにもなって凄く微笑ましかった。ウサミ先生と出会ってからまだ数日しか経っていないし、正体もよくわかっていないから皆が信用出来ないのもわからない訳では無いが、生徒思いで優しいから悪い人な訳がない。…ってすっかり私は信用してしまっている。でも、いつか皆もウサミ先生と仲良くなる日が来るといいな。



















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大変遅れてしまい申し訳ございません!リクエストをいただいて約半年後に完成させる遅筆な自分が憎いです。
出来る限り頑張って書きました。淡路さん、リクエスト本当にありがとうございました!




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