なんて烏滸がましい




「名前?やっぱりここにいた」
うざ。私はそいつの笑顔と仕草をみてすぐに思った。
今日は採掘も終わったから大好きな唯吹ちゃんと映画館にでも行こうと思ってフラフラしているところを運悪く狛枝に捕まってしまった。狛枝がまるでここで待ち伏せをしてたかのようなタイミングで出てきた事にはあえて触れないようにしよう。
「狛枝、何か用?」
「名前ってボクにだけ言い方が冷たいよね…。まあそれも魅力のひとつなんだけども。用件は名前とご一緒したいなって」
どさくさに紛れて変な事を言われた気がする。
「断る。狛枝といるとなんか嫌な気分になる」
「それってボクの存在を全否定してるような意味になるんだけど…」
そのつもりで言ったんだよ、と言おうとしたが後々面倒くさくなりそうだから言わないでそそくさとその場から逃げる。けれど何故か狛枝が後ろから着いてくる。私が走っても合わせて走って来るので、一向に距離が遠くならない。
「…本当になんでついてくるの?ポケ●ンの連れ歩きじゃないんだからやめてよ」
「アハハ、懐かしいね。今度対戦でもする?」
「絶対に嫌。一撃必殺が百発百中技になりそう」「まあボクに命中率とか関係ないけど」
チート過ぎて話にならない。というかそもそも通信なんてやらないけど。こうして話ながらも足は駆け足くらいのはや歩きをしている。私は息が切れかけているというのに一方の狛枝は貼り付けたような笑顔を崩さず息も切らさずに、足を俊敏に動かして着いてくる。



私がこの男が苦手な理由の一番はその貼り付けたような笑顔だ。初めて見たときも笑っていたが、何処か感じた冷たい笑い方が苦手で。言葉や仕草が一致していないことが直感的にわかった。狛枝は初めての挨拶の時、愛想よく私に
「ボクと仲良くしてくれると嬉しいな」
と言ったが、私は
「ごめん無理かも。初対面で悪いけど、あなたの笑顔が苦手だから」
と突き放す様に返事をした。すると狛枝は突然笑い始めた。会話も途切れた事だし別の場所に行こうとしていた私は狛枝の笑い声に足を止めて凝視してしまった。狛枝は笑いながら私に近付いてきて、両肩をその細長い体からは想像出来ない程の力でいきなり掴んできて、
「ッハハ、名前さんって凄いね。今までボクのこの態度を見てうざそうにする人は沢山いたけど、まさかそこまで言われるなんて初めてで…。」
ここで一呼吸おいて、狛枝は妙に艶っぽく
「名前のこと、好きになっちゃったかも」
と言った。聞いた瞬間に鳥肌が体全身に立った。それと同時に恐怖も感じた。私が最初に感じた恐怖が露になったかのような。しかもいきなり呼び捨てに変えるとは馴れ馴れしい。私は肩に乗ってる手を払い、何も言わずに立ち去った。何も言わなかったのではなく、正確にいえばあまりにも怖くて声が出せずに何も言えなかったのだが。



それから今でも狛枝は私に付きまとう事をやめない。ずっと突き放す態度をとっていればいつか飽きてやめると思っていたのだが、その考えは甘かったようだ。今日も明日も多分追いかけまわされるんだと思う。











(鬼ごっこ中っすか?唯吹もやりたいっす〜!)
(唯吹ちゃん…!私は助けて欲しいんだけど…)
(じゃあ鬼決めのじゃんけんでもやろうか?)
((それは不公平(っす)!))




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