Holography




「え…、狛枝…?」
近くに元気そうな狛枝が立っていた。私は思わず駆け寄ると、
「どうしたの名前さん。ボクの顔見てそんなに驚いて…。ああ、もしかしてボクの顔が気持ち悪くて不快な思いをさせてしまったのかな…」
この自虐的な話し方。間違いない、狛枝張本人だ。
狛枝はゲーム内で酷い死に方をしていた。現実に戻ってきた後からずっと生き残り組でゲーム内で命をおとした組の復活を長い間待っていた。何年待ったかはもう数えていないからわからないけれど。その待っている間にも未来機関の優秀な人々による、命をおとした組を復活させようと試みる道具や薬が幾つも送られてきて時には苗木さん達も来てくださったが、その効果を確認出来ることは無く、皆が元気になるときは無かった。
それなのに、なんでいきなりこんなに元気になるなんて。
「こ、狛枝なの?本物なの?」
「…名前さんったら酷いな。クラスメイトの顔や体型をみても信じてくれないなんて…流石のボクも傷付くよ」
「だって、狛枝自身は何も覚えてないかもしれないけど」
狛枝は一度ゲーム内でだけどしんだんだよ、と言ってしまいそうになり、慌てて口を閉じる。狛枝は不思議そうに私の言葉の続きを待っている。なんていえばいいのだろう。
「…えっと、あ、悪の組織に長い間眠らされてたの!ずっと目を覚まさないから心配だったんだから!」
つい適当な事を口走ってしまった。悪の組織ってなんだ、と自問していると狛枝は変なものを見るような目で私を見ていた。恥ずかしさで爆発してしまいそうだからやめてほしい。狛枝はふ、と軽く笑ったあと
「名前さん嘘はよくないよ。ボクも断片的だけれど覚えているから、隠さないで大丈夫。…名前さんには随分と迷惑掛けちゃってたみたいだね。ごめんね、ありがとう」
と言った。早口だった。狛枝も恥ずかしさがあったのだろう。早口でも、狛枝は確かに「ありがとう」と言った。その言葉で私の涙は零れてしまった。今まで、ずっと、その口から聞きたかった言葉。本当に聞ける日が来るなんて。一度零れた涙は止まらなかった。
「ちょ、名前さんどうして泣いてるの!?ボク何かしちゃったかな、ごめんね名前さん!」
私の異常な泣き方をみて狛枝は慌てていた。それを見て私は、止まらない涙を必死で自分の手で拭いて、笑みをこぼす。――そんな貴方が大好きでした。普段は掴み所がなさそうな貴方が、実は女性の涙に戸惑うって。夢の中でもやっぱり貴方は変わらないんだ。現実で貴方に会いたいと強く思うようになってしまった。夢って優しいけど、残酷だね。




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