絆されてしまう




「名前、何故食わない?腹が減っては何も出来ぬぞ」
目の前で十神が美味しそうに骨付き肉を頬張る。ごくり、思わず息を飲む。食べたいに決まってるじゃない!と、叫びたくなる気持ちを抑える。
私は今、絶賛ダイエット中である。特になんのためという理由こそないが、体重が気になる年頃なのだ。1グラムでも痩せたい。
そこで私が始めたのは罪木ちゃんから教えてもらった初心者にも出来そうな、小さい頃にお母さんに沢山言われた『「一口20回以上噛みなさい」ダイエット』だった。端的過ぎるタイトルだけにわかりやすいし、これなら私にも出来そうだと思い始めた初日に今、強敵を目前にしている。十神が食べている花村の作った美味しそうなお肉達が私を誘うかのように食欲をそそるいい香りを漂わせて、光を浴びて輝いている。うっかりカロリーの高い物でもよく噛めばいいんじゃないか、なんて都合のいい解釈をしてしまいそうになる。けれど、絶対に食べては駄目だ。私はダイエットする前は十神、赤音ちゃんや弐大の次に大食いだったので、もし今食べてしまったら拍車が掛かってダイエットの初日に失敗…なんてオチになってしまうのが目に見える。
なんて悶々と一人で考え込んでいると、いきなり目の前に大量の薬が置かれた。置いてきた人は十神だった。
「と、十神?なんでこんな大量の…下剤!?」
よくよく見ると、その大量の薬は殆どが腹痛の薬だった。あとは大腸の薬や下剤、胃薬。十神が持ってきた意味がわからずに私が不思議そうに薬をまじまじと見ていると、
「フン、どうせ貴様の事だから少し体調を崩したのだろう。全く愚民は自己管理すら出来ないのか…。世話がやける」
十神が余所見をしながら、言った。普通の人が聞いたら上から目線だな、と思う言い方だがこれは十神特有の励まし方だと知っている私は何故か微笑ましく見える。そっぽを向いているのは照れ隠し。それに"少し"体調を崩したと彼自信で推測している筈なのにこんなに大量の薬を差し出してくれるなんて。
「ありがとう、十神。心配してくれて」
心配かける訳にもいかないから、食べよう。
こうしてダイエットは1日目で呆気なく失敗に終わってしまった。








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十神って連呼してますが、詐欺師です)^O^( 表記凄く悩みました…

12/13 加筆・修正




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